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びぶりおふぃりあ  ブックレビューとオススメの海外ドラマ・映画のあらすじと感想。顔面血管腫(赤アザ)カバーメイク体験談

ブックレビューとオススメの海外ドラマ・映画のあらすじと感想。顔面血管腫(赤アザ)カバーメイク体験談

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★★★★☆
オススメポイント ワン!


我が家の娘が、早いものでもう四月から中学生になる。
穏やかな性質で、学校でも先生に真面目だとほめてもらう類の生徒なのだが、これがときどき生意気を言うので驚く。
たとえば太宰治についても、である。

太宰治は平明な文章でわかりやすい分、子どもにも批判しやすいのだろう。
自殺の仕方にしても『女の人といっしょじゃないと死ねない』なんていかにも軟弱で、自分たち半人前の子どもたちが母の手にすがるのと同じレベルに映るのだろう。

畜犬談である。

今更の感はあるが、文学作品を読ませておこう、と、昨夏頃に芥川龍之介や夏目漱石など文豪の作品のなかから読みやすいものを買い与えてみた。太宰治もその中にあった。いくつか中編が収まった、旧字体を新字体に改めた本である。

畜犬談のストーリーは、犬が苦手な主人公の中年男が、家に居ついた犬にやけに慕われつきまとわれて閉口する様をユーモラスに語り、最終的に情が移っていることに気付くというものだ。

太宰治の他の有名なものに比べれば、そんなに大した作品ではないのかもしれない。
魚服記のように澄み透った暗さもなければ、富岳百景の富士山の大きさと人間の小ささの対比もない。もちろん人間失格のような赤裸々もないのである。

それでも、12歳の娘が軽蔑しきったように、

「だってこんなのありふれた話じゃないの。実は好きだったってことに気が付く、なんていうのは」

と鼻を鳴らすのには異を唱えてしまった。

太宰治の小説は、そう言ってしまえばすべて陳腐なよくある話に見えるのかもしれない。
でも、彼はそれを最初にやった人だということを忘れてはいけない。
私たちの世代がいまだに彼の踏み分けた道を歩き、彼の模倣をしているからこそ、今読むと「よくある話」だと思うのだ。
文豪たちの描いた世界がもし、当たり前のありふれたこと、と感じられるのなら、そこにこそ彼らの先見の明があり、それこそが彼らの卓越なのだ。