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仕様変更に伴いリセットされた拍手がおかげさまで少しずつたまりはじめましたので、拍手のブログパーツを目立つ場所に上げました。読んでいただく方の参考になると思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。(2009.10.27)
最近やっと、文学作品とビジネス書、実用書を同じ☆基準で考えちゃだめだなと気付きました。(遅 (2009.10.18)

オススメ度:☆☆☆☆★
完結したイメージ 
寺山修司青春歌集 (角川文庫)
寺山修司青春歌集 (角川文庫)
角川書店 2005-01
売り上げランキング : 157209

おすすめ平均 star
star「古い衣装」に込められた「新しい精神」

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作曲者本人の演奏が(たとえ演奏者としての腕前がそれほどでなくとも)演奏家や研究者に多くのヒントを与えてくれるように、作家自身による朗読は多くの謎を解き明かしてくれる。
正直に打ち明けると、「自作朗読の世界」を聞いて、与謝野晶子の短歌朗読は平凡な節で言葉の斬新さがまるくなっており幻滅した。それで与謝野晶子の価値が減ることはないが、大好きなので残念である。もっと型破りであろうと思っていたのだ。萩原朔太郎の乱暴な読み方には逆に感激したが。
時代時代における聞き手の好みなのだろう。私は国語教師やTVのアナウンサーのように淡々と節回しなしで読み上げられるのがいちばん美しく感じるが、話し言葉の移り変わりの激しさはやがてまた、今私が思い描いている読みかたにも顰蹙させるのだろう。

寺山修司は自作短歌をどのように朗読するのだろう。
実はそのことに並々ならぬ興味を抱いている。
寺山修司の短歌はうまい。

マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや


にがきにがき朝の煙草を喫うときにこころ掠める鴎の翼


煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし



選んだ三首ともが煙草の歌になってしまったが、偶然である。
新しいことばで技巧なく歌っている割には、言葉の密度が低くなっていないことが目を引く。それはおそらく基幹となる言葉の組み合わせ自体に飛躍があり、点在する言葉を結ぶ構造に物語がこめられているからだろう。(マッチ・海・霧・祖国)(朝・煙草・鴎・翼)(煙草・国語教師・明日)

一方、情念や肉体を感じないのも寺山修司の歌の特徴である。
ひとつには少年めいた社会への批判や憧憬が、もうひとつは映画を見ているような作りこまれた非日常の気配が、その原因だ。
そのため、美しく叙情的だけれども三十一文字を飛び出てくる歌心はない。

寺山修司の歌はある完結したイメージであるといえるだろう。

寺山修司自身による自作短歌の朗読を一度聴くことができれば、彼とその完結したイメージとのつながりを紐解くことができるのではないかと思うのだが、どこかにはあるのだろうけれど作家本人の朗読が見つけられずにいる。

「書を捨てよ、町へ出よう」

この映画の冒頭のように、津軽訛りでぶつけるように、やはり読むのだろうか。
そう考えると、趣がある。が、やはり少年である。

寺山修司青春歌集 (角川文庫)寺山修司青春歌集 (角川文庫)

寺山修司少女詩集 (角川文庫) 幸福論 (角川文庫) 両手いっぱいの言葉―413のアフォリズム (新潮文庫) ポケットに名言を (角川文庫) 書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)

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関連タグ : 寺山修司, 短歌,

オススメ度:☆☆☆☆☆
天使の放蕩 

暗い春 (福武文庫)暗い春 (福武文庫)
吉田 健一

福武書店 1986-11
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おすすめ平均

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中性的イメージにはエロティックじゃない方とエロティックな方の二種類があるが、ヘンリー・ミラーは後者だ。
彼はやさしい。かわいらしい。そして街から街、路地から路地へとふらふらしている。娼婦や雑踏になじんで、パトロンや友達に寄り添って。

ヘンリー・ミラーが書いたもの。それは『小説』、とは呼べない。もし小説に物語が不可欠ならば。
のみならず詩的で警句に満ちた文章は、オーソドックスな小説の文体の持っているリズム(うねり)とはかなり違う力を主張してくる。

まちがったことを書くのを気にかける必要はない。伝記作者がそういうまちがいを全部説明してくれる。



そう書いているように、ヘンリー・ミラーは自らの体験を闊達に狂った美しい言葉をちりばめて書き連ね、構成を考えたりすることはまるっきり放棄した。
その言葉の魅力はこの本を読み終わらせることがない。永遠に、だ。

しかしそのうちに、肉はばらばらになり、皮膚の下の血が空気と合体でもしたように、急に世界全体が再び唸りだし、からだを支えている骨までが溶け去る。そういう日がきて、われわれはたとえば、初めてドストエフスキーを発見する。



ヘンリー・ミラー同様ドストエフスキーに心酔しているものだから、この一節だけで半日は夢見心地だ。そして続けて、

その本が置いてあったテーブルのテーブルかけの匂いはいまでも覚えているし、時計を見ると、永遠まで後五分しかなかった。



と言われると、時が止まるではないか。

「暗い春」を最初から最後まで通して読むことは、とうに諦めたのだ。
どこを切り取っても広告の宣伝文句みたいにイメージに溢れメッセージの際立つことば。最初から読む必要はないし最後まで読む必要もまたないのだ。
気まぐれにページを開いて、ただそこで時を止める。

太陽が腐りかけ、天使たちが尻の穴に爆竹を突っ込んで空を目指して飛んで行く人生の冬は実に美しい。



ヘンリー・ミラーを読むことは想像力を使うし、それは想像力の中でも、時の金色の光に照らし出された雑踏の中にあって、めにうつるもの・みみにきこえるもの・はだにふれるもの・におい・あじ、ありありと迫ってくるそれら全てが観念を貫いて互いに結びつきあうという感覚、その部分を酷使すると、そのあとしばらくぼんやりしてしまう。
そう、それは人生で稀に降りてくる啓示と同じものなのだ。

暗い春 (福武文庫)
吉田 健一

暗い春 (福武文庫)
英国に就て (ちくま文庫) 南回帰線 (講談社文芸文庫) 北回帰線 (新潮文庫)
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関連タグ : ヘンリー・ミラー,

オススメ度:☆☆☆☆☆
かんたんで、正確で、なじんで、あらた。 
絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)
絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)
おすすめ平均
stars江國香織さんの考え方がみえる本
starsやわらかな文章の中に幸せな宝石
starsブンガク少女の絵本紀行
stars江國さんの子供時代を垣間見る様な…
starsなつかしい思い出

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冒頭:

マザーグースにこういう歌がある。

 いきたいところに いけるのなら
 いまいるところには いないでしょう
 いまいるところを でられなきゃ
 いきたいところは いけないの

           (ここではないどこか センダックの絵本によせて)




江國香織は正確なことばを話す。すごいことにはそれが、とてもかんたんなことばなのだ。かんたんなことばで成り立った、かんたんな文章。とても正確。
つまり難しいことばで難しく何かが語られている場合、その正確さを真実には測りえない。文章という架空の世界の隅と隅とがピシッと合っているとか、柱が立派だとか大きいとかいって感心してみたり引用して賢く見せた気になってみたり、そんなことをわたしはしているのだ。
けれども。
江國香織のことばはすとんと腑に落ちる。
かんたんで、正確で、なじむ。
なじむといって、陳腐ではない。
新しいというんじゃないけれども、やはりあらたなのだ。
かんたんで、正確で、なじんで、あらた。

その正確さは、小説よりも童話、童話よりもエッセイに印象強く現れ、書評において極まる。
江國香織が彼女自身のこころから目を転じ遠くを見るほど、ことばは正確さを増すのだ。それはおそらく創作において彼女が誠実であろうとしているこころが、そのこころというものの全般が誰にとってもだが、あまり正確なものではない、ということだろう。
のみならず、彼女が評論に必要なもの、膨大な教養を実はたっぷりと持っているということでもある。プライベートといえば何かにつけて生活能力の欠如を訴えわらいばなしにしている江國香織だが、絵画・詩歌・童話などへの造詣は深く、エッセイでも、あとがきでも、すぅっとその場にちょうどいいものを引き出してくる。その紹介がまた、ただであったのでは見いだせなかったような魅力をその作品に添える気の利いたものなのだ。
(私は尾形亀之助を江國香織によって知った)

さて、「絵本を抱えて部屋のすみへ」は絵本の評論集である。
絵本の評論というと子どもの教育について理想やそれにまつわる運動の理念を語ったものという印象が強かったのだが、江國香織は、絵本を大人にも子どもにも同じ価値のある芸術あるいは生活必需品として、一冊一冊を丁重に紹介している。彼女が子ども時代からぼろぼろになるまで読み熱愛した作品ばかりだが、それを思い出ばなしにおぼれることなく書いているのだ。

「ここではないどこか センダックの絵本によせて」は、言い表すのが非常に難しいことを論じている。
『ここではないどこか』というのはどこなのか、というのがそのテーマである。
江國香織曰く、『ここ』とは『居心地のいい今いる場所』である。
そして『ここではないどこか』は決して、『ここよりいい場所』ではないので、シンデレラや白雪姫が『何者かに成って行った場所』とは違う。
つまりそこは私が私のままで出かけていく安全でない場所であり、すなわち冒険だ、ということがだんだんにわかるのだが、冒険とストレートに言ったのではたちまちに死滅してしまうような微妙な意味合いを『ここではないどこか』に託しているのである。

この本(『ふふふん へへへん ぽん!』)は不思議な本で、どの絵を見ても、なつかしい気持ちで胸が一杯になってしまう。繊細なペン画はリアルで緻密だけれど、空気がどこか微妙にずれていて、木の一本、猫の一匹、階段の影の一つが、すでに「ここではないどこか」の深い落ち着きと、かるいかなしみ(中略)をたたえているのだ。



目次の一覧を見れば、いずれかの本は目にしたことがあるだろう。
手にとって、愛読書への感慨をあらたにしてみてはどうだろうか。

目次:

わたしに似たひと ――フランシスの絵本によせて
ここではないどこか ――センダックの絵本によせて
生活の愉しみ ――プロヴェンセン夫妻の絵本によせて
個人的なこと ――童謡絵本によせて
地上の天国 ――バーバラ・クーニーの絵本によせて
憧れのパリ ――マドレーヌ絵本の世界
日常生活はかくあれかし ――がまくんとかえるくんの絵本によせて
たくさんの人生 ――ビアトリクス・ポターの絵本によせて
のびのびしたアメリカ ――アメリカ古典絵本の世界へ
骨までしゃぶる ――グスタフ・ドレの絵本によせて
悦びのディテイル ――ピーター・スピアーの絵本によせて
素朴と洗練、それから調和 ――まりーちゃんの絵本によせて
単純に美しいということ ――ディック・ブルーナの絵本によせて
外国のいぬ ――アンガスとプレッツェル、ハリーの絵本によせて
現実のお茶の時間 ――『レナレナ』によせて
曇天の重み ――『ブリキの音符』によせて
護られて在るということ ――マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本によせて
失えないもの ――ガブリエル・バンサンの絵本によせて
親密さと必然性 ――『かしこいビル』の絵本によせて
物語の持つ力 ――『シナの五にんきょうだい』と『九月姫とウグイス』によせて
陰としてのファンタジー ――リスベス・ツヴェルガーの絵本によせて
清濁あわせ呑む絵本 ――『モーモーまきばのおきゃくさま』と『メアリー』によせて
他人の暮らし ――『ファミリー・ポートレート』によせて
大きな絵本 ――『絵本 グレイ・ラビットのおはなし』によせて
身をまかせる強さ ――『おさるのじょーじ』の絵本によせて
本を閉じることさえせつなくなってしまうではないか ――『すばらしいとき』の絵本によせて
ごつごつしたかなしみ ――斉藤隆介と滝平二郎の絵本によせて
つつましい輝き ――くんちゃんの絵本によせて
くらくらする記憶 ――『おこちゃん』によせて
コークス色の記憶 ――『海のおばけオーリー』によせて
セレナーデ ――『あひるのピンのぼうけん』によせて
あかるいうみにつきました ――『せんろはつづくよ』によせて
豊かな喜び ――トミー・デ・パオラの絵本によせて
幸福きわまりない吐息 ――『トロールのばけものどり』によせて
誘拐の手なみ ――『Zちゃん −かべのあな−』によせて
対談1 絵本をつくるということ <五味太郎さんと>
対談2 絵本と出会い、絵本とつきあう <山本容子さんと>
あとがき
解説 ――小野 明
書名・作者名さくいん
全国絵本・児童書専門店リスト




絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

日のあたる白い壁 (集英社文庫) すきまのおともだちたち (集英社文庫) 夕闇の川のざくろ (ポプラ文庫) 思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫) すみれの花の砂糖づけ (新潮文庫)

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オススメ度:☆☆☆☆☆
かぼちゃちょうちんのことを「パンプキン・ムーンシャイン」というのです。 
パンプキン・ムーンシャイン (ターシャ・テューダークラシックコレクション)
パンプキン・ムーンシャイン (ターシャ・テューダークラシックコレクション)Tasha Tudor

おすすめ平均
stars原作の方は星5つ、なのですが…
stars大人が手元に置きたいハロウィン英語絵本
starsムーンシャイン
starsターシャ23歳のデビュー作
starsハローウィーンにおすすめの絵本(ターシャ・テューダーの処女作) かぼちゃちょうちんはできるのかな?

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ターシャ・テューダー23歳のデビュー作。
パンプキン・ムーンシャインの主人公の少女シルヴィー・アンはハロウィンのためにコネチカットのおばあちゃんの農場にきている。岡の上のはたけまでかぼちゃを取りに行き、持って帰っておじいちゃんにジャック・オー・ランタンを作ってもらって飾るというだけの話なのだが、一番大きいかぼちゃを選んだために持ち上げることができず転がすうち、丘の斜面を転がりだしたかぼちゃが農場の家畜や農夫ののどかなひと時を驚かせて通り過ぎていく描写が楽しい。
ターシャ・テューダーのファッションを目にしたことのある人も多いだろう。彼女の19世紀風の暮らしと美しい庭は写真集やテレビで紹介されて人気を集めている。
シルヴィー・アンの衣装はターシャそのものだ。ボンネットをかぶりくるぶしまでのズロースの上に綿のワンピース、長く白いエプロン姿。
古風な暮らしを描いた素朴な絵。だが、視点に意外性があっておもしろいのだ。
ことばを読んで期待したのとは違う絵が描かれている。
たとえば、はたけでかぼちゃを探し出すところでは、大きなかぼちゃとシルヴィー・アンがいっしょに描かれている絵を思い浮かべたのだけれど、描かれているのは日差しよけに目の上に手をかざしてこちらを眺めているシルヴィー・アンの全身像。意中のかぼちゃを発見したのか口元には笑みが浮かんでいる。肝心の大きなかぼちゃは、絵のなかにはない。読み手がかぼちゃになるのだ。
また、終わり近くには門柱に乗せられたろうそくをともされて笑うジャック・オー・ランタンが描かれ、手前には尻尾を立て毛を逆立てた猫がいるのだが、ここはこんなふうに語られている。

シルヴィーと おじいちゃまは
かぼちゃちょうちんを
もんの はしらに のせて
やぶのうしろに かくれました。

みちをやってくる にんげんや いきものが
  ぎょっ
と おどろくようすを
やぶのかげから ながめて
たのしんだのです。



藪の中に隠れているというおじいちゃんもシルヴィー・アンも、絵には登場しない。
あの暗がりにふたりはいるのだろうか?そして驚く猫を見て息をころして笑っているのだろうか?おじいちゃんの腕とシルヴィー・アンのわき腹はぴったりとくっついて、外で過ごすには寒いハロウィンの夜をあたためているのだろうか?どちらかが笑えば、もうひとりの体もそっと揺れているだろうか?

素朴なようでいて奥深いテューダーの絵本は想像力を掻き立ててくれる。

ターシャ・テューダークラシックコレクションはAmazonのなか見!検索で内容をみることができるので見てみることをオススメ。

なか見!検索ができるターシャ・テューダークラシックコレクション

パンプキン・ムーンシャイン (ターシャ・テューダークラシックコレクション)パンプキン・ムーンシャイン (ターシャ・テューダークラシックコレクション)
Tasha Tudor

コーギビルの村まつり こぶたのドーカス・ポーカス (ターシャ・テューダークラシックコレクション) コーギビルのいちばん楽しい日 輝きの季節―ターシャ・テューダーと子どもたちの一年 ベッキーのクリスマス

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オススメ度:☆☆☆★★
ひどいわおかあさん…。 
森のなかのママ (集英社文庫)森のなかのママ (集英社文庫)

集英社 2007-05
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冒頭:

昨日、あたしは振られた。


とらえどころのない女性を母にもった娘の小説というのは珍しくないパターン。
私自身もその娘なので共感する部分もあった。

贅沢な暮らしをするために父が描いた母の絵を売ろうとする母に詰め寄る場面、

あたしは一瞬、言葉に詰まる。ママとしゃべっているとよくあることだが、追いつめているつもりが、なぜか追いつめられているような気がしてくる。
「ママの絵なんだよ、あれ」
必死に言うと、
「わかってるわよそんなこと」
とママはだんだん勢いづいてくる。
「ママの絵なんだもん、いいじゃない。そうよ、そうよ。ママの絵なんだから、いずみちゃんがごしゃごしゃ言うことないでしょ?」
あたしはもはや言い返す気力もなくなって口をつぐんだ。


主人公いずみはこの母親に思いを寄せる伏見さんという老人に恋をしている。美しい母親には取り巻きの男性たちがいて、彼らは浮世を忘れるため彼女のサロンへ集まってくる。

娘のあたしが言うのも何だけれど、ママの容色は、年をとっても色あせていない。それはたぶん、ママの美人ぶりが、のほほんに支えられているからだ。
  (中略)
この世の不幸は、ママに何の影響も及ぼさない。ママは傷つかないい、成長もしない。どこ吹く風、なのだ。


とらえどころのない女性を母にもった娘ならわかるだろうが、この母親、読んでいて苛々する。

途中ママがどこかにいなくなるという筋なのだが、いなくなって、みつかるまでのページ数が少なすぎることにがっかりし、もっといなくなってろと思った。「なんだこれ、ほとんどいなくなってないじゃないか」いずみがママを大切にし、心配しすぎるところも気に食わなかった。

私の母もそういう女性だったと書いたが、母親のもっている雰囲気というのは主に母親自身がことばで表明したセルフイメージにささえられているように思う。母親の言葉には呪術の力があって、子どもは最大の被験者となる。たとえば、おかあさんってがんばりやさんなのよ、と言われれば自堕落な姿を毎日見せ付けられてもかなり長いこと子どもはそう信じるし、まじめなのと言われても信じるだろう。母の言葉は逃れがたい。
私は母が庭を眺めていたことを思い出す。
狭い庭に斜めに日が差していた。春の昼さがりのことだった。木々の枝影が橙に輝く草むらを抱き、柔らかな風が母が育てた花を揺らしていた。風は開かれた窓から吹き込んであたたかな土のかおりで部屋をみたした。
母は窓枠に寄り掛かり、外を見ながら言った。
「きれいね。あなたにはわからないでしょうけれど、景色がきれいだ、なんてことは」
母はいつも自分の豊かな感受性が私には絶対に理解できないという言い方を何かにつけてしていた。それは反抗期を迎え母の体から離れて行く私への復讐だったのだと今はわかるが、自分にも目に映る景色をいとおしむことができると発見し、母に特別な目があるわけでもないと理解するのには相当長い時間がかかった。

自分の家族関係や人間関係を思い起こさせる話を読んで苛々したり怒ったりするのはストレス解消になることもあるが、こと”とらえどころのない女性”というモデルに限っては、美しさと永遠というイメージが必ずついて回る彼女たちはとっちめられるということが絶対にないので、すっきりする可能性は少ない。

軽い読み物としての筆力は良い。
ただし読みものとして面白いと手放しに評価するには、テレビ局や夫の裏切りがさらさら書かれていることに却って不快感をもったし、いずみが老人の伏見さんを男性として好きな理由も好きな気持ちもうまく描かれていないように思う。これではそばにいたいとか触りたいという気に到底なれず、どう考えても同級生の照次郎のほうが良い。照次郎との恋はうまく書かれている。
まあ、そういう話なのかもしれないが。
森のなかのママ (集英社文庫)森のなかのママ (集英社文庫)

もう切るわ (光文社文庫) ヌルイコイ (光文社文庫) だりや荘 (文春文庫) 春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) グラジオラスの耳 (光文社文庫)

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オススメ度:☆☆★★★
オススメポイント:やっぱり大人には無理
ポリアンナの青春 (岩波少年文庫)
ポリアンナの青春 (岩波少年文庫)高田 美苗

岩波書店 2004-01
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おすすめ平均 star
starその後のポリアンナ
starいつも心に喜びを
starいつも心に喜びを

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冒頭:

ここはボストンのコモンウェルス街。デラ・ウェザビーは、そのとおりにある姉の家の堂々とした石段を、とんとんと軽やかにかけあがり、玄関のベルを勢いよく鳴らしました。



「幸せゲーム」なんて、子どもだからうまくいくんじゃないの?と書いた「少女ポリアンナ」に続編があった。
「ポリアンナの青春」。なんだか赤毛のアンシリーズを意識したような邦題。
あの極度のポジティブシンキングが大人になったポリアンナの中でどう変化していくのか、さて、読んでみた。

まずこの本は大きく二部に分かれている。一部は「少女ポリアンナ」のすぐあとの話で、保護者であるポリー叔母さんとチルトン医師がドイツに遊学した留守にボストンに滞在した期間を描いており、二部はその六年後20歳になったポリアンナの青春時代を描いている。

第一部は「少女ポリアンナ」とそんなに変ってはいない。
ポリアンナはボストンでもベルディングスヴィルに住んでいた時と同じように「喜ぶゲーム」(←今回の訳)で人々の心を開き、人生を変えていく。美しい資産家のオールドミスと姉の子どもという「少女ポリアンナ」と全く同じ設定のもと、浮浪児を引き取るというところまで丸々同じだ。違っているのは大都会ボストンの人々の冷たさ、他人に対する無関心に戸惑うポリアンナと、貧困の問題に少し踏み込んでいるところかな。

この話は、さらに進んで(ポリアンナにはさっぱりわけがわかりませんでしたが)、「貧乏人に施しを期待させて、いっそう貧乏にする」とか、「見境もなく与える害」や、「組織的に行われない慈善の悪い影響」などにつながりました。



また、売り子などをしながら都会で一人暮らしをする貧乏な娘たちの身持ちを堕落させようとする人々の存在についても、あからさまな言葉さえないもののかなりの部分を裂いて描いている。おそらく体を売っていたのであろう娘たちを救い出し更正させる慈善団体についても批判している。

「ただ、ときどき思うのは、まちがった方向へ行ってしまうまえに、どうして助けてあげないのかってこと。」



いよいよ、第二部。
なんとチルトン先生が死んでしまった!といきなりドラマチックに始まる。
「少女ポリアンナ」で恋が実り美しく朗らかになったポリー叔母さん、一転もとの気むずかしやさんに逆戻り。まぁ…。そこに弱り目に祟り目の、一家を支えていた鉄道株が暴落、貧乏暮らしに転落。ひどい…リスク管理ができてないわ。
そんな境遇で果たして「喜ぶゲーム」ができるのか?ポリアンナ。

「だから、彼女がそれをもうあきらめて、やらなくなっていると思いたくないんです。それに、大人になったポリアンナが、人々に向かって、何かに喜びを見つけなさいとしょっちゅうすすめているところなど、想像できません――ぼくはむしろ、ポリアンナがこれ以上、成長しないのを望んでいるんです。」



ほら、やっぱり作者も「子どもだからゆるされるけど…」って思ってたんだわ。
どんな答えを見せてくれるのかしら…?わくわくするわね。

チルトン先生が亡くなるまで住んでいたドイツでは、ポリアンナはいくつかの挫折を味わったようだ。
「もっと悪いことだってあるんだから今を喜ぶべき」という「喜ぶゲーム」がまったく役にたたず、むしろ人の気分を害する状況を見てきたことをジミー・ペンデルトンに打ち明ける。
「少女ポリアンナ」でポリアンナの紹介で大金持ちのジョン・ペンデルトンに引き取られた浮浪児ジミー・ペンデルトンである。
このジミーが6年経って背の高いハンサムな青年になっているのだ。
ハンサムといえば、第一部でやはり大金持ちのカルー夫人の養子になったジェイミーもまたハンサムな青年に成長している。

ハンサム率高し。

一方ポリアンナは美人ではないけれど話をすると魅力的な女性。

危険、ロマンス小説の予感。

もちろんこのハンサム二名と恋の鞘当があるわけで、その舞台もキャンプに行って荒ぶる雄牛に追われたポリアンナを助けるたくましい腕…。ジェイミーに想いを寄せる秘書…。
そしてお約束の「相手は自分に気が無い」と思い込んで忘れようとする相思相愛の若者たち。読者に「あーもう!好きなくせに!」ともどかしさを与えるのはポイントね。
若い人たちだけかと思いきや終盤には「少女ポリアンナ」で既に爺さん格だったジョン・ペンデルトンやカルー夫人まで巻き込み、果てはカルー夫人の生き別れの甥問題が再浮上するなど大騒ぎである。
ジミーとポリアンナの結婚を阻むジミーの血筋の問題も「実は高貴な家柄の末裔だったことが発覚!」と誰の葛藤も克服も必要としない運命濫用で片がつき、ほっと読み終わってみると…

大人になった少女ポリアンナが「喜ぶゲーム」とどう対峙しどう実践するか

という最重要テーマは、いったいどこへ?

ポリアンナの青春 (岩波少年文庫)ポリアンナの青春 (岩波少年文庫)
高田 美苗

少女ポリアンナ パレアナの青春 (角川文庫) 少女パレアナ (角川文庫クラシックス) 大きな森の小さな家 ―インガルス一家の物語〈1〉 (福音館文庫) A Little Princess (Puffin Classics)

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オススメ度:☆☆☆☆☆
Twitterやりましょう♪

Twitterって何?と聞かれたときには、「理解するものじゃなくてやってみるものだよ」といった上で、「駅とか飲み屋とかにいる人たち皆の雑談や独り言全部に聞き耳立てられる能力が授かる、みたいな感じ」と説明している



という投稿をTwitterでしたら、初めての(最後かも)赤ふぁぼ(ふぁぼったー参照)になって嬉しかった。

というわけで、TwitterというWebコミュニケーションサービスがあって、私もこの夏から使っている(@norigyo)。

2009年の春先にアゴラでTwitterについて触れている記事を読んでアカウントは取ってみたんだけれど使ってなかった。どう使っていいのかよくわからなかったの。そこでmixiで「Twitterってやってみようよ」とマイミクに呼びかけたんだけど「mixiで十分」と断られてそのまま放置…。当時はオススメユーザー登録フローなるものもなかったので、一人で始めるにはちょっと敷居が高かったかな。
そんなある日、@sakuratandotbizのブログ「ゆっくり…して…イってネ!」でTwit DelayというTwitter用のWebサービス(予約投稿できる優れモノ)のテスト要員を募集していたのをきっかけに、もう一度始めてみたのだ。
ちょうどデジもの好きの勝間和代氏(@kazuyo_k)とデジもの音痴の広瀬香美氏(@kohmi)コンビのやりとりがリアルタイムでHowToになった人も多いのではないかと思う。衆院選で盛り上がったというのも大きい。色んな商用サイトアカウントの遊びの部分が見られるのも楽しい(毎日jp(@mainichijpedit)・ヤフーショッピング(@yahoo_shopping)・楽天トラベル(@RakutenTravel)・トラベルコちゃん(@travelko)etc.)

どういうものなのかは冒頭で書いた通りで、効果・利益の有無は童話「ききみみずきん」を知っている人ならおわかりと思う。特に木下順二版がオススメ。

ききみみずきん (岩波の子どもの本 (18))
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star美しい日本語♪

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そういえばTwitterのTLで、Twitterを使うことでうつ病が快方に向かう気がする、といっている人がいた。私はうつ病の診断を受けた経験はないけれど、理屈としてそれはありえると思う。
140文字という字数制限は思考を分断するし(裏を返せば思索には向いていないということだ)、「ドロリッチなう」「りなかふぇなう」など「なう」系の投稿は行動療法に最適ではないだろうか。
以前セラピストに進められて森田療法のノートの付け方(片面が行動したことで片面が考えたことを書く)をして見たけれど、ノートにつけているとどうしても”考えたこと”の比重が大きくなってしまってうまく実践できなかった。
でも不思議とTwitterだと行動の記述が多くなる。
森田療法 (講談社現代新書)
森田療法 (講談社現代新書)
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star岩井氏が死を賭して盲目の中で口述した著作、壮絶であり、心を深く打つ
star精神科医になって20年間愛読
star安らかに・・・。

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という素晴らしい可能性も見出せるTwitterだが運営は急成長にまだ追いついていない部分がある様子で、近くだと@kum_i@kumi_iという偽アカウントを作られたという出来事があって、@kum_iは実名・本人写真を使用している一般人アカウントで、客観的に見て明らかに@kumi_iは実名・本人写真を盗用した悪意のある成りすましなのに、Twitter運営側に報告しても全く対応・回答がないままという。
Twitter運営側が不正報告をどのように処理しているのかはわからないが、WBSで放送されたりNHKで紹介されたりするようになったからには、こういったことに迅速に対応する信頼できるサービスになって欲しい。

また最近、実名での表現を薦める記事が「勝間和代のクロストーク”ネット上でも実名で表現を”」に掲載されたが、勝間和代氏は@kum_i@kumi_iのようなケースをどのように考えるのだろうか。
実名での表現が必要な場合も確かにあると思うが、それは存在をかけ血を吐くような思いで表現する場合ではないかと私は思う。有名な人たちは、その人がその人であることで報酬を得ているが、多くの一般人は単に労働力として賃金・給与を得ているのであり、実名を利用されることでその(ささやかな)地位を失う可能性もあるのだ。そして、多くの人間にとっての「世界」「世間」とは細切れに耳目に流れ込んでくる情報への印象の集まりであり、「自己」とはその中に紛れ込んでくる「みんなが自分に対してもっている印象への印象」にかなり依存している。そこへ無名の悪意が宛名だけは明記されて飛び込んでくることは、本人にとってははたから見るよりも辛いことだ。

確かに私が@kum_iをフォローしたのはアイコンが本人写真だったことが大きいし、独身の一般人の女性が実名を載せ、かつアクティブにオフ会に行ったりする姿に好感を持ったという動機も強い。中村紘子@hiroko_nakamuraについても同様だが、彼女たちの姿はなんというか、インターネットの健全さと将来性の象徴なのである。
しかし、この魅力は無名の悪意に対しても作用してしまう。

とはいえ現実問題として、本人とは全く関係なく他人の肖像写真や本名を晒す行為はとても簡単にできてしまうし、そういったことを管理することができるのは運営側だけなので、とりあえず迅速な対応が求められるのはTwitter運営側ということになるだろう。実名云々やアイコンの持つ力といった問題の答えは、議論によってではなく、いつか歴史が答えを出すだろう。

ところで、先ほど書いたセラピスト、昨年愚痴を聞いてもらおうと尋ねてみたら昼間から待合室はサラリーマンでいっぱい、びっくりするほど繁盛しており、1時間も待って診察室に入ったら先生、森田療法なんかとっくに捨てて、一通り私の話を聞くと、
「薬出しますから」
って。
うつ病蔓延。

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名作からの引用が良い
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自己啓発書の引用文献はやっぱり自己啓発書であることが多いけれど、哲学者・宗教家・文学者の著作からの引用が多いので読んでいて面白く、説得力がある。
帯にも以下のように引用されている。
「はじめは人が習慣をつくり、それから習慣が人をつくる」ジョン・ドライデン
「習慣だけが、骸骨のように人間の体躯をささえている」ヴァージニア・ウルフ
ウルフを引用してるから、買っちゃった。ずるいよね。ぜんぜん、ウルフのかけらもないんだけどね、ロビン・シャーマの存在に。繊細さとか、あやうさとか、狂気とか、時の流れとか・・・と思わず笑ってしまう。
笑って許してしまうほど、この本は名言の引用の寄せ集めで、オリジナルの文章は人柄の良さをベースにしたアクのないものだ。
書いてある内容そのものは何十年か前からどこかで聞いたようなものだけど、本質的に自己啓発書はポルノと同じで、ある明確で代わり映えしない(でも必要な)目的を満たす手段を飽きのこないように別の趣向で提供し続けるものなので、趣向をメインで紹介するほうがいいかと思う。
ということで、サンプルとして、1〜10章(全体の約10%)に引用されている著名人のリストを以下に作成

  ジョージ・バーナード・ショー
  マハトマ・ガンジー
  デイヴィッド・スター・ジョーダン
  トマス・カーライル
  ジョン・ドライデン
  ヴァージニア・ウルフ
  プブリウス・シルス
  ベンジャミン・ディズレーリ
  セネカ
  ソール・ベロー
  デイヴィッド・オグルヴィー
  アルベール・カミュ
  ソフォクレス
  アンドレ・ジード
  セオドア・ルーズヴェルト
  ジャン・ジャック・ルソー
  ケヴィン・コスナー

実に多彩。10%でこれだけ出てくるわけだから全体ではこの10倍は登場する。
ただし、上手に引用していて、元の人物および言葉のアクを殺しており(誰がこの引用を見てウルフが長く精神病に悩み苦しみの果てに入水自殺した作家だと思うだろう)、名言集ではなくロビン・シャーマが提唱しているライフスタイルの法則本にきちんと仕上がっている。


目次:

「できない自分」から行動型人間へ   行動力
  1   天職を見つける
  2   考えているより実行する
  3   最初の二十一日間を乗りきる
  4   小さなことを考えない
  5   好敵手を選ぶ
  6   具体的で明確な目標を設定する
  7   ”問題”を前向きに再構成する
  8   もっとリスクを負う
  9   慣習と反対の道を行く
  10  逆境を受け入れる
  11  トラブルを偉大な教師と見なす
  12  変えられないことを心配しない

「時間のムダづかい」から有効活用へ   時間管理
  13  日の出とともに起きる
  14  1時間早く起きてみる
  15  一日のはじめに”プラチナの三十分”をもつ
  16  一日二十分、瞑想タイムをつくる
  17  通勤時間を”移動大学”にする
  18  時間を価値あるものに集中して使う
  19  時間を効率的に管理する
  20  睡眠時間をけずる
  21  孤独になれる時間を確保する
  22  腕時計をしないで一日をすごしてみる
  23  毎週、安息日をもうける
  24  「心配休憩」をとる

「弱気な自分」から一歩前に出る自分へ   ポジティブ思考
  25  日記ではなく、日誌をつける
  26  あやまちから得た恩恵を書きだす
  27  問題をリストアップする
  28  弱点を自覚する
  29  ”理想の隣人リスト”をつくる
  30  自分専用の”理事会”を招集する
  31  「愛のむち」を実践する
  32  心が元気になるマントラを唱える
  33  英知を与えてくれる本を読む
  34  「集中的な読書」をする
  35  心を奮いたたせる引用句を集める

「不満・くすぶり」から能力開花へ   自己実現
  36  眠っている才能を揺り起こす
  37  仕事を愛する
  38  自分の仕事にもっと高い価値を見いだす
  39  いま以上に自分の価値を高める
  40  いちばんなりたい人物のようにふるまう
  41  「ヒーロー・リスト」をつくる
  42  「ゴール・カード」を持ち歩く
  43  個人コーチにつく
  44  話し方コースをとる
  45  マスターマインド同盟を築く

「気分屋」から意識的な生き方へ   意識改革
  46  視点を変え続ける
  47  正直という哲学を身につける
  48  失敗する勇気をもつ
  49  気分を乗り越える
  50  インスピレーションを重んじる
  51  本能に耳をすます
  52  謙虚になる
  53  「日々の行動規範」をつくる
  54  報酬だけではなく、プロセスを楽しむ
  55  お金を使うときに感謝する

悪いストレスから心身のリフレッシュへ   癒しと健康
  56  朝、新鮮なフルーツ・ジュースを飲む
  57  もっと笑う
  58  体という寺院を大切にする
  59  「ニュース断ち」をする
  60  沈黙の誓いをたてる
  61  鳴った電話のすべてには出ない
  62  魂のためのリクリエーションを大切にする
  63  人を許して重荷をおろす
  64  思考に向く環境をととのえる
  65  ”やすらぎの場所”を見つける

とめどない忙しさから心の豊かさへ
  66  ミニ・バケーションをとる
  67  自然とまじわる
  68  森のなかを歩く
  69  散歩するときは目的をもたない
  70  つねに本を持ち歩く
  71  すべての本を読み終えなくてもよい
  72  創造性を刺激する本を読む
  73  『モリー先生との火曜日』はぜひ読む
  74  音楽の力を享受する
  75  ささやかなものを楽しむ
  76  もっと写真を撮る

「つきあいべた」から積極的な人脈づくりへ   人間関係
  77  知らない人に思いやりを示す
  78  「愛の口座」に預金する
  79  相手を理解し、大切にし、尊敬する
  80  きき上手、頼み上手になる
  81  いらだちをコントロールする
  82  いさぎよく「ノー」という
  83  他人のせいにしない
  84  ”お礼のカード”を常備する
  85  三人の親友を見つける
  86  いい映画から学ぶ

「仕事人間」から賢い家庭人へ   家族愛
  87  わが子に楽しい時間をプレゼントする
  88  いい親になる技術をみがく
  89  家族で食事をとる
  90  帰宅する前にリラックスする
  91  子どもを手本にする
  92  記念日に木を植える

無目的人生から「実りの人生」へ
  93  自分から運命を引き寄せる
  94  冒険心を取りもどす
  95  ライフ・ストーリーを書き直す
  96  遺産記述書をつくる
  97  喜んでほかの人を手助けする
  98  無私無欲で奉仕する
  99  一日を一生とみなす
  100 今日を最期の日のように生きる
  101 自分の人生に目標をかかげる



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冒頭:

寝る前に星を眺めるのが睦月の習慣で、両眼ともに一・五という視力はその習慣によるものだと、彼はかたく信じている。私も一緒にベランダにでるが、星を眺めるためではない。星をみている睦月の横顔を眺めるためだ。睦月は短いまつ毛がまっすぐにそろっていて、きれいな顔をしている。



あらすじ:
同性愛者で男の恋人のいる夫とアル中で情緒不安定な妻の奇妙な偽装結婚。

感想:
恋は、・・・少なくとも性愛を伴った恋愛の記憶は、いつも匂いの記憶と絡み合っている。
恋人達にはいつも匂いがあった。人には誰であれ匂いがあるのだけれど、恋をするとその人の匂いだけが際立って群集の中でもはっきりと香ってくる。そしてその香りはいつも何かのような匂いをしている。麦茶のような匂いだったり、麝香のような匂いだったり、雨のような匂いだったり。
きっとその匂いをかいだ私は嬉しくなったり安心したり欲情したりしたはずなのだが、その匂いのことをまざまざと思い出すと、わけもなくただただ苦しい。

「きらきらひかる」の主人公笑子(しょうこ)の夫睦月(むつき)は、
・医者
・若い
・かっこいい
・やさしい
・家事できる
と何でも揃った男だが、同性愛者で女性とは関係できない。
笑子は情緒不安定で精神科に通っている。
二人はそれぞれの両親から世間体を押し付けられ見合いをし、意気投合して偽装結婚をする。

しかしこの結婚問題がある。笑子は睦月に対して恋心を抱いているのだが睦月には紺という男の恋人がいる。

「紺くんの話をして」
台所にむかってどなると少し間をおいて、どんな話、という声がかえってきた。
「紺くんとセックスするときの話をして」
私がもう一度どなると、睦月はたまじゃくしを持ったままやってきて、ぼそっと
「機嫌が悪いんだね」
と言った。
「紺くんとセックス―――」
わかったから、と言って苦笑し、睦月はまじめに考えこむ顔をした。ええと、ね。
「ええと、紺はね、紺の背中は背骨がまっすぐで、コーラの匂いがするんだ」
私は睦月の横顔をじっとみつめた。
「一年じゅう日に灼けていて、腰が細くて、腰もやっぱりコーラの匂いなんだ」
コーラの匂い。
おしまい、とつぶやくみたいに言うと、私が文句を言うよりはやく、睦月はシチューを煮込みに台所へ行ってしまった。



結婚という保守的な関係を結びながら、この暮らしがいつ終わるかわからないという不安を常に抱いている笑子。紺と友情が芽生えたり、紺と睦月の精子をロシアンルーレット的に自分に体外受精できないかと発案したり、とおかしなはなしになっていく。
どれだけ行いを律しても、どれだけ思いを隠しても、嫉妬は決して消えることがない。生きかたのスタイルやファッションが違ったとしても存在していて、人を狂わせる。淋しさと笑子は表現しているが、コーラの香りがそれはただの嫉妬だと暴いているのではないか。
かっこよくてやさしい同性愛者との偽装結婚という少女趣味でリアリティの無い設定の上でリアリティの無いドラマが展開し、それなりにリアリティのある心理が描かれている。
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冒頭:

私たちの母は、昔からずっと、朝父を送りだすと化粧をし、夕方父が帰ると化粧をおとして出迎えた。



あらすじ:
仕事も進学もしていない19歳の私・宮下こと子。一風変った宮下家六人家族の出来事を描いた物語。

感想:
宮下家は子どもたちが永遠に子どもでい続けることのできる行き止まりのような家だ。
家族ひとりひとりにストーリーがあり、お互いがそれぞれのストーリーを見守りながら絶妙な距離を保っている。
お嫁に行った長女そよちゃんはしあわせに暮らしていたはずなのに、あるときなんの説明もなしに出戻ってくる。…なぞめいたそよちゃんの結婚生活がこの物語のフレームになっており、その破綻を契機としたある晩秋に物語は始まる。

「そよちゃん」
私は、台所に立つ姉の後ろ姿に向かって言った。
「離婚するってどんな気持ちのもの?」
そよちゃんは鍋をみたまま少しだけ考えて、それから微笑を含んだ声でおっとりと、
「そうねえ、半殺しにされたままの状態で旅にでるような気持ち、かしら」



津下というそよちゃんのだんなさんはいい人だけれど地味で、そよちゃんにはふさわしくないと宮下家では考えられている。その人を選んだ理由もわからないし、別れる理由も誰にもわからない。でもそよちゃんが離婚して帰ってくるというと宮下家はうきうきした気分に包まれる。

不思議な人妻そよちゃん、がりがりにやせてへんてこりんな恋愛ばかりしている次女しま子ちゃん、フィギュアを作っているという理由で中学校を停学になる末っ子律。ニートのこと子。
両親は世間に流されない独特の価値基準で子どもたちを受け入れる。

律のフィギュア騒動のときの宮下家はこんな様子だ。

父は首をかしげる。
「どうもよくわからない。ほんとうにそのなんとかいう人形をつくったことで、学校は文句をいっているのかい」
災難だったわね、と、そよちゃんがしんみり言った。
「そうなのよ」
憤りのおさまらない母が言う。
「よその人のぶんまでつくってあげて、それで喜ばれるなら素晴らしいじゃないの」
「律」
依然として核心が持てないという顔で、父が律の名前を呼んだ。
「はい?」
「ほんとうにそれだけなんだね?お前の親切に対して相手がすすんで金を払い、学校はそれが気に入らない?」
律がきっぱりうなずくと、父もようやく気が晴れたらしかった。
「なんだ、くだらない」
それをきくと、母も私もそよちゃんも律もなんとなく気が晴れて、そのあとはたのしく夜ごはんを食べた。



こと子には深町直人という恋人がいるが、部外者というより宮下家の幻影のような男だ。父よりも若く父よりも甘く父と違って体が許される『父親』として存在している。

私は、しま子ちゃんいも深町直人がいればいいのにと思った。こんなふうに晴れた日の公園で、隣にすわって一緒に缶のお茶をのめる男のひとがいればいいのに。しばらく会えずにいたあとで、ちょっと背が高くなったようにみえる男のひと。ちゃんとあたたかい格好をして、やあひさしぶりって言う言い方が自然で、ポケットから固くて甘い袋菓子を出してくれる男のひと。



冬を越し、春先にそよちゃんの結婚生活は終焉を迎える。説明もなしに、静かに悲しく。

がちゃん、と重たい金属音を残して、玄関の扉が閉まった。そよちゃんは、駅にもバス停にも送りにいかなかった。こうして、私達の姉に「半殺し」にされた義兄は帰っていき、その義兄に「半殺し」にされた姉は、うちに帰ってきた。



こうして宮下家と外界との唯一のパイプが閉じられ、物語は穏やかに収束する。

最後の最後でそよちゃん、ちょっとしたサプライズを用意してくれるのだが、それは読んでのお楽しみ。
江国香織の淡く丁寧な筆致による心地良い家庭の雰囲気。自分の家とは違うのに、読むうちにこの家で育ったような気がしてきて、排他的にすらなるから不思議。

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