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テネシー・ウィリアムズ

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメ対象:性に裏切られる人
オススメポイント:告白
欲望という名の電車欲望という名の電車
テネシー ウィリアムズ Tennessee Williams 小田島 恒志

慧文社 2005-08
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裕福だった女が落ちぶれて、妹のところに厄介になりに来る。少女だったころに不幸な恋愛をしたためにこの女、ブランチの人生は暗い陰を負っている。彼女はまず、古くからの屋敷を手放してしまったのだと妹に打ち明ける。しかし彼女は嘘をついている。屋敷を手放しただけでは、なかった。彼女の不幸はもっと根が深かったのだ。

一番のクライマックスは第六場、ブランチがミッチという男と互いの不幸な過去を打ち明けあうシーンだ。恋人を病気で失ったというミッチの話しにほだされ、ブランチはかつての結婚について打ち明ける。十六のとき初めて恋をした。暗がりから突如光に晒されたように世界が目の前に現れるような、そんな恋だった。
「でも、運が悪かったのね、わたし。」
彼女は言う。
どうにもならないほど絶望的に愛していた夫は、同性愛者だった。
”そのこと”を率直に語ること自体がまだタブーだった時代の戯曲だ。同性愛、という言葉すら一度も使われていない。
それを語る言葉がないということが、ブランチの告白をより生々しい苦悩にゆがめる。
「その人にはどこか変わったところがあったわ、繊細で、感じやすいって言うか、何か男らしくないところが―――見た目は全然、女っぽいわけじゃないのよ――でも――あったのね、そういうところが」
彼の性癖を示唆する言葉はこれだけ。
彼は同性愛者であることに苦しみ、ブランチに救いを求めていた。しかしブランチにはそれがわからなかった。
「わかっていたのは、わたしがどうしてだかあの人を失望させたってことと、あの人が求めながら口に出せないでいた救いを与えてやれなかったってことだけ!」
彼らは肉体関係を結べなかったのだろう。その失敗を示唆する言葉もこれだけ。
「あの人は蟻地獄にはまって、わたしにしがみつこうとした――なのにわたしは、ひっぱりだしてやらずに、いっしょに滑り落ちていったの!それがわかってなかったのよ、わたしには。何も分かっていなかったの、ただ、なんとなく、彼をたまらなく愛しているのに、救ってやることはできない、自分を救うことも出来ないって感じてた。」
だってどうしてわかるだろう、なぜうまくいかないのか、なぜわたしのこの恋はこの結婚はこんなに絶望の予感をたたえているのか?彼女にそれがわかるはずがあっただろうか。16歳、初恋だった。目がくらむような恋だった。
「そしてある日、分かったの。考えられる限り最悪の形で。誰もいないと思って、ふと入った部屋に、――誰もいないどころか、二人の男がいて・・・」
夫の男との浮気現場に足を踏み入れてしまったことを示唆する言葉も、これだけ。
ついにそのことを知ったブランチはダンスの最中に夫を決定的に傷つけてしまう。(短調のポルカが流れる、とト書きにしばしば繰り返されるのはこの体験の繰り返しになる。)
「見たわよ!嫌らしい!ゾッとするわ・・・・・」
彼にぶつけた言葉も、これだけ。
夫は、咥えた拳銃をぶっぱなした。

彼女の打ち明け話を聞いたミッチは、二人が互いの伴侶になれるのではないか、と提案する。そのキスにむせび泣きながらブランチはこう言う。
「ときには――神様が――こんなに早く!」
皮肉なセリフだ。
なぜならそれは、あまりに遅く、だったのだから。
ミッチは何もわかっていなかった。彼女の人生はとっくの昔にめちゃくちゃのぐっちゃぐちゃに壊れ果ててしまっていた。マザコン男の感傷なんかで救うことができるなんてお門違いの手遅れ、とんだお笑い種だったのだ。

彼女は学校の教師でありながら夜な夜ないかがわしいホテルに出入りして見知らぬ男に体を売り、生徒である少年に手を出して学校からも町からも放逐された身だったのだ。
彼女の夫のそれがそうだったように、彼女の性はタブーであり持ち主を苦しめ破滅させるものとして描かれている。欲望は持ち主と食い違い、先天的に絶対的に不一致で永遠に同一になれないのだ。

やがて彼女の秘密は暴かれ、ミッチは彼女から離れていく。もともと風前の灯火だった彼女の人格は追い込まれ崩壊する。だからこの告白による交感はもろくはかない。それでも私はこの告白のシーンが好きだ。
”それ”を語る言葉の少なさにもかかわらず、ここにはぎりぎりの真実、渾身の真実の発露がある。どぎつければいいというものではないのは確かだが、かといって少ないから良いのではないだろう。許されることも許されないことも頼りなく移り行く時代の中、その人なりの限界の中、戦いの果てに搾り出された言葉だけが生み出す、迫力なのだろう。

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