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フランス文学

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメ対象:淑女紳士のみなさま
オススメポイント:脂肪の塊、とは何か
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脂肪の塊、というこのタイトル、物語中の娼婦のあだ名なのである。
しぼうのかたまり!
売れるんだろうか。他人事ながら心配になる。
ところが読んでみるとこれがかなりの売れっ子なのである。頃は普仏戦争(1870~1871)、所はプロシアに占領されたフランスのある地域、貧困の時には肥満が美しさの条件となるならい、脂肪の塊も男たちの食欲をそそってやまない女なのだ。
その印象は雪に難儀して宿場に到着の遅れた馬車の中で三日分の豊富な弁当の入ったバスケットを膨らんだスカートの足下から取り出す描写によって深く刻み込まれる。

まず小さな瀬戸物皿と薄手の銀のコップと、それから大きな蓋物を取り出した。蓋物の中には、丁寧に包丁を入れた二羽の雛鳥の完全なのがジェリーに包まれていた。そして籠のなかにはまだいろいろとおいしいものが紙にくるんであるのが見られた。パイだの果物だの菓子だの、要するに宿屋の板場の厄介にならないようにと、三日旅に用意された食料であった。四本の酒瓶の細長い首が、食物の包みの間から覗いていた。女は、雛鳥の翼肉のところを一つ撮んで、ノルマンディーで「レジャンス」と呼ぶ小さなパンに添えて、つつましく食べ始めた。

ひもじい様をありったけ書いた後でこんな描写をされてしまうと。私など我ながらよく出来た煮物と頂き物の美味しい林檎で夕食をたっぷり済ませたはずなのに、舌が浮かび上がるほど唾が沸く。
占領された街を逃げ出した裕福な人々の馬車に相乗りし、彼女も別の街を目指している途上なのだが、ここで豊満美があだとなる。途中の宿でプロシア人士官に気に入られてしまったのだ。
彼女は愛国心から断り続けるが、士官は思いを遂げられなければ相客もろとも宿を出立させない、と職権を利用して圧力を掛ける。
良質のエピソードに織り込まれ通奏される相客たちの心理の変化は、実に社会の縮図をあらわしている。社会における"ケガレ"のどうにもならない必然性、ある秩序が保たれるため必要な犠牲、その役割を荷わせるのも荷うのも同じく人間だという矛盾。社会ってこういうものなんだよなあ。

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