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ヘロイン

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オススメ度:☆☆☆☆☆
おススメポイント:人は変わる…限りなく透明に近いブルー

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫 む 3-1)
限りなく透明に近いブルー (講談社文庫 む 3-1)
おすすめ平均
starsここまで不毛な小説も珍しい。
stars王道の純文学
stars機会があれば映画もどうぞ
stars日本文学史上”最高傑作”
starsエグいが初期作品の強度は今でも有効

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冒頭:

飛行機の音ではなかった。耳の後ろ側を飛んでいた虫の羽音だった。蠅よりも小さな虫は、目の前をしばらく旋回して暗い部屋の隅へと見えなくなった。



村上龍が龍言飛語の8/18 volume.126 「酒井法子容疑者の逮捕に関する報道について」で「薬物中毒の恐ろしさ」について話していて、
「薬物濫用はその人の精神や肉体を破壊するこわいことだからだめだ」
って言っていることはもちろん正しいのだけれど(文句のつけようがない)、
その原体験として子どもの頃公民館で見せられた教育映画だっていうのは…ぐ……
じゃあ「限りなく透明に近いブルー」は…??

「限りなく透明に近いブルー」に出てくる人々の全員が多種多様なドラッグをやっていて、多かれ少なかれ彼らの人生はうまくいってないんだけれども、だからって「薬物乱用はバカ」ってムードじゃない。

オスカーの部屋では中央に拳程もあるハシシが香炉で焚かれ、立ち込める煙は呼吸のたびに否応なく胸に入ってくる。三十秒もたたないうちに完全に酩酊する。からだの中の毛穴から内臓がドロドロと這い出し、他人の汗やら吐く息が入り込んでくるような錯覚に陥いる。
特に下半身は重い沼につかったように爛れ、口は誰かの器官をくわえたくて、体液を飲み込みたくてムズムズしている。皿に盛られた果物を食べワインを飲むうちに、部屋全体が熱に冒され始めて、自分の皮膚を引き剥がして欲しいと思う。ツルツルした油にまみれている黒人達の肉体を体内に入れて揺すりたいと感じている。チェリーの載ったチーズパイ、黒い手の平を転がる葡萄、茹でられて湯気をたててビクンと跳ねる蟹の足、薄紫色に澄み切ったアメリカ製の甘いワイン、疣が全体を覆った死人の指に見えるピクルス、女の唇と舌のように重なり合っているパンとベーコン、サラダに垂らされるピンク色のマヨネーズソース。



あらすじ:

主人公リュウは福生の横田基地の近くに住み、米軍兵士を相手に日本人の女をあつらえドラッグ&乱交パーティーを開いて金をもらっている。若くて美貌、中性的なリュウは自らも女たちと、そして黒人男性たちと交わる。いつもつるんでる仲間はリュウも含めヘロイン・ハシシ・ヒロポン・メスカリン…思いつく限りの薬物に侵されて明日への希望なんか、ない。

リュウはそんな彼らを一切批判しないし否定しない。

感想:

第二作「海の向こうで戦争が始まる」に繋がっていく、覗きめがねを逆に見てるみたいに遠くに身を置き、縮小されて精巧に動くおとぎの国として世界を眺めている。
それが「優しさと美しさと傍観性」というこの小説の最大の魅力を創り出している。

薬物が体にも心にも悪いってのは皆知ってるわけだし、ばれたら破滅だってことも知ってて、気持ちいいことなんか他にもあるし、薬買う金あるなら他にいっぱい楽しいことできるだろって…。
イノチを燃やしたいってやむにやまれぬ強い願望かな。
イノチを燃料にしない限り得られない気分の高揚と薬物の効用との相乗効果で、凡庸さで到達し得ない場所に行く。そこで、イキたまま死ヌ。

「限りなく透明に近いブルー」は文学史のターニングポイントのひとつであり、今も新鮮で美しく感動的だ。Amazonで"村上龍"で検索して「売れてる順」に並べ替えてみたら上位にくるロングセラーだし、多くのレビューがついて評価だって高い。
今時、本を読んでから麻薬に手を出すような勉強熱心なジャンキーはいないだろうし、「限りなく透明に近いブルー」以降精力的に活動を広げ多方面に実績を積んだ作家、村上龍に処女作と一貫した発言を求めたりしないけどさ。

こんな小説を書いたからって、俺が変わっちゃってるだろうと思わないでくれ。俺はあの頃と変わってないから。
                                         リュウ
(「リリーへの手紙―あとがき」より)



「あなた、変わったわねぇ、リュウ。…でも別にいいのよあたし。どっちだってさ」ってリリーなら言うだろうか。

不相応に燃やしたイノチのツケが悪魔の印章を捺されて回ってくる。最初っからわかってるんだけど、じゃあこの人生にどんな意味があるのよ、壊れちゃいけない自分っていうのにどれほどの積極的な意味があるの、ということの答えがね、薬物は肉体や人格から意味を奪い壊してしまうから良くない、とかじゃ、答えになってない。
むしろ、「限りなく透明に近いブルー」の方が答えに近かったりして。

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

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