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伊藤健太郎

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オススメ度:☆☆☆☆☆
オススメ対象:IT業界で働く人々
オススメポイント:あきらめるな!
4822281779プロジェクトはなぜ失敗するのか―知っておきたいITプロジェクト成功の鍵
伊藤 健太郎

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私はソフトウェア開発を生業にしている。フリーのエンジニアだ。
仕事を探すときに提出するスキルシートにはだいたいこんなようなことが書かれている。

●某大学事務システム Oracle7.3/Unix(Sun)
C,C-Shell PG

●某都市銀行リスク管理システム SQLServer/WinNT
VB PG/SE

●某金融機関連携システム DB2/Unix(AIX)
Java,JSP,MQ PG/SE

●某自動車メーカー基幹システム Oracle9i・EBS/WinXP・Unix
Pro*C,Perl SE

(以上適当に抜粋)
経験したプロジェクト名を羅列するだけでものすごく立派に見える。専門知識をもって困難な仕事を見事にこなしてきたかのように。
でも、そんなことはない。
用語がきらびやかなだけだ。
参画してきたプロジェクトの時間にして3割、数で言えば8割は、失敗したプロジェクトだった。(失敗プロジェクトは打ち切りやリストラを行うので期間は短くなる)
たとえば100億円単位、何百人ものメンバーの仕事が、ある朝突然に解散になる。サーバ・PC・エンジニア。それだけで成り立っている生産現場なのだから解散は至極簡単に行われる。
または、とっくに赤字になったまま協力会社をとっかえひっかえ長いトンネルのように続いていく。
失敗の形はさまざまだが、それらの現場にはだめになった家庭に漂っているような、「もうわたしたちいっしょにはけしてしあわせになんかなれないよ」的な確信が漂い、深い事情をしるよしもない私のような出稼ぎ末端作業者などの隅々まで漏れることなく行き渡っているのであった。
IT事業は、失敗しやすい。
モノが見えないので状況の把握が難しく、また、新しい分野だから管理の手法も確立されていなかったためだろう。
「プロジェクトはなぜ失敗するのか」は、数多くあるIT業界裏話的な本ではなく、実はタイトルとは裏腹に、どうしたら失敗しないのかについて書かれた本である。

・プロジェクトの成功とは何なのかを明確化し、かかわる全ての人が共有すること。(利益なのか、顧客満足なのか、etc.)
・ステークホルダー(利害関係者)を明確化し、プロジェクトマネージャーはコミュニケーションの要となること。
・プロジェクトマネジメントの手法(PMBOK)を導入すること。
どれも理由や背景が経験と前向きな信念に裏打ちされ丁寧に書かれている。静かで、説得力がある。
プロジェクトマネージャー個人あての成功メッセージではなく、プロジェクトにかかわる全ての人に役立つように書かれている。会社重役も顧客もチームメンバーも果たすべき役割と持つべきプロジェクトマネジメントの知識があるのだ。
なによりも魅力的なのは、この本が「みんなが幸せになる」ために書かれているということだ。
先にも書いたようにITのプロジェクトは失敗しやすい。
大規模プロジェクトにかかわりがちだった傾向(規模は大きいほうが失敗しやすい)と昨年秋まで2年ほど続いたIT不況の影響があるとはいえ、私のように参画したプロジェクトの8割が失敗していくのを目にしていると、プロジェクトが失敗するのは当然のことだと思い、やがて成功を信じられなくなる。自分の役割を限定し、責任の範囲を狭めることで自由で発展的な仕事をしなくなる。
でも、プロジェクトを成功に導くことはできる、とこの本は教えてくれるのだ。仕事は喜びであり、みんなに幸せをもたらすものだ、という本来を思い出させてくれる。

ITとか、プロジェクトとか、まあそういうのはおいといて、仕事ってただ単にシンプルに、よきもののはずなのだ。そこには発見があり、実現があり、報酬があり、誰にとっても喜ばしいものになるはずなのだ。

私事だけど、先日、嬉しいことがあった。春の人事異動で離れていた大切な仲間と、またいっしょに仕事ができるのだ。
組織の中で仕事をする以上、上からの異動の命令に逆らうことはできない。三十を過ぎてありえない、って勝手に思い込んでたのに遭遇した、情熱を分かち合える仲間。離れるのはつらいことだった。がまんするのが自分のためであり仲間のためだと思った。
代わりに与えられた状況は、業務もわからず責任をとれないリーダーと、不十分なスキルの後輩のフォロー。かつての仲間達は陰ながら支えてくれたが、変わらない状況に、いや何より自分の建前に孤独を感じることもしばしばだった。
辛い半年。辛い状況を支えているのはほかならぬ自分のがんばりなのだ、と気付いた瞬間、私は契約の終了を決意した。
そんなときに仲間の思い切った尽力によってもたらされた、知らせ。いっしょにやろうって、やめるなって、言葉。胸が、あつい。
もういちど、信じてみようか?仕事を、その喜びを。

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