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冷戦

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメポイント:題材が秀逸
オリガ・モリソヴナの反語法
オリガ・モリソヴナの反語法米原 万里

おすすめ平均
stars傑作、傑作、傑作!
starsもっと小説を書いてほしかった。
starsこれはほんとうの話
starsすばらしい小説です
stars秋の夜長に

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自分の過去の謎を解き明かす旅の話は、それだけで既におもしろい。

これはひとつのロマンの典型なのだ。

自分の人生の価値を確かめに行く、それは多くの人が抱く夢だろう。このような物語は読み手の願望を代わって満たしてくれる。主人公は自分と同じ境遇である必要はない。むしろ知らない遠い世界の出来事であるなら申し分ないのである。

一見したところ平凡な中年女が、平凡ならざる過去を持っている。
ある挫折に繋がるひとつづきの思い出。

あらすじ:
少女時代を過ごした共産圏における豊かな情操教育がダンサーへの夢を抱かせた。
ダンサーになったもののスターになるほどの才能には恵まれず、怪我によって引退、帰国子女としての経験を活かし翻訳業へ転身。
しばらくはダンスを目にするのもいやだった。
しかし時間がその傷も癒やした。ふとしたきっかけで彼女は過去を辿る旅に出る。
それはスターリンの大粛清時代の恐怖政治が現実のものだったと確かめることになる。



感想:
チェコスロバキアのソビエト学校。地元の学校ではなく、ソビエト連邦管轄の学校である。

ここで主人公志摩は名物ダンス教師オリガ・モリソヴナに出会う。
オリガ・モリソヴナは優に七十を超える堂々たる老婆であるが、スタイルは抜群に良く、おまけにレッスンでは破廉恥な言葉を多様、特に反語法を使って生徒を震え上がらせるのだ。
反語法、要するにここでは誉め殺しのことだ。

「ああ神様! これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう。長生きはしてみるもんだ。こんな才能はじめてお目にかかるよ! あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだね!」

これ、誉めているのではないのである。

『文法の授業で反語法のことを習うよりはるか前から、子供たちはみな、先生が「天才」と言うのは「うすのろ」の意味なのだと知っていた。』

実に豪傑で好奇心をそそられる老婆オリガ・モリソヴナ。そんな彼女には激動の過去、そして誰にも言えない秘密があった。

スターリンによる大粛清の恐怖はその当時のみならず、人々のその後の人生までを狂わせてしまった。


ノンフィクションとフィクションの違いは、事実か空想か、ってところだけなのだろうか…なんて、根本的なことを、「オリガ・モリソヴナの反語法」を読んで、考えなおしてしまった。


「オリガ・モリソヴナの反語法」は、共産圏で共産党員の娘として育った米原万里でなければ語ることのできない題材を扱っている。小説なのかノンフィクションなのか、どちらとも言えない雰囲気が魅力的だ。ノンフィクションで満たすことの出来なかったロマンをファンタジーが補い、スターリン時代の真実を描き出している。

もっと押し進めてエンターテインメントに徹したらどんな話になっていたんだろう、とちょっと想像してしまった。

米原万里のキップの良さ、読む人をじらせ待たせたりできない有能さは、小説としては変則的かもしれないけど、全体を上品かつスピードのあるものに仕上げていて、面白く読める。

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