びぶりおふぃりあ  ブックレビューとオススメの海外ドラマ・映画のあらすじと感想。顔面血管腫(赤アザ)カバーメイク体験談

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男爵家の一人娘ジャンヌが、学校教育の修了により厳格な修道院での生活から解放された翌日から、財産の殆どを失い老婆となって孫娘を引き取る日までの人生を描いた作品。


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モーパッサンの『女の一生』を読んで何故主人公が不幸になったのかがわかった女性は幸せになる、というから、女子生徒諸君は一度読んでみるといい」と中学生のときに英語教師から言われ、読んでみた。わかった気になった。けれどそれから社会で働き、結婚し、離婚し、母となった今、そんなことわかるもんか、と思う。

最近婚礼が多く、花嫁となる女性たちを見ていてつくづく、彼女たちが幸せになるかどうかだってわからないよなあ、と思う。話しの端々に、どうしたら結婚がうまくいくのかと彼女たちなりに結論を出し覚悟を決めているのが覗える。一人の娘は弟の妻が3歳の子どもがいるのに看護婦として3交替の仕事をしているのを非難し、一人の娘は伯父の妻の性格がきつく、姑である彼女の祖母―明るくて話好きな女性―を抑圧していることを非難していた。もともとそういう価値観の持ち主なのだが、結婚を間際に控えてそういった傾向が著しくなった。「仕事を辞めて家を第一にすれば」「気立て良く振舞えば」婚家ときっと必ずうまく行ってかわいがってもらえる、そうしなければならない、そうすればだいじょうぶ、と自分に言い聞かせているようだ。
そんなものでもないんじゃないの、とは友人として言ったけれど、それ以上ははばかられた。
嫁が気立てが悪いとか仕事ばかりしているとか人は言うけれど、本当に彼らが言っているのは「お前は他人だ」ということなのだ。そんなこと、言っても仕方がない。

閑話休題。
ジャンヌは修道院を出たあと風光明媚な海沿いの田舎で楽しく暮らし、あっという間に恋に落ちてジュリアンという名の子爵と結婚する。
性教育を全く受けていなかった彼女は男女のことの一切を知らず、父親から結婚初夜の当日に漠然とした性生活の暗示を与えられただけでそれを迎え衝撃を受ける。
夫ジュリアンはロマンチックな恋人だったが新婚旅行が終わろうとするころから欠陥が明らかになる。彼の結婚は財産をあてにしたものであり、みっともないほどケチ臭く生活をつまらないものにし、また女癖が悪くて最期はそのために命を落とす。
ジャンヌは息子のために生きるが溺愛したために息子はできそこないになってしまう。そして皮肉にもケチの父親の血は引き継がず凄まじい浪費家で、ジャンヌを破産させてしまう。
ジャンヌの一家は土地の司祭の怨恨によってカトリック教会の葬祭を受けられず、そのために貴族階級からも庶民からもそっぽを向かれて落ちぶれる。

ではジャンヌは本当に不幸になったのか?というとそうでもない。少なくとも読後みじめではないのだ。逆に爽快である。
あらすじを読めばわかるとおり奇抜なストーリーではない。だが、ひとつひとつの出来事がいきいきと描かれていて退屈しない。登場人物は知り合いのように近しく感じられ、いうことすることが新鮮な感慨をもたらす。
ジュリアンが倹約のためにリストラを行った結果従僕の用をすることになったマリウスという少年が大人用のダボダボの制服を着て必死で馬車の後を追ってくる場面の滑稽さいじらしさ。
また、息子の次に女の子が欲しくなったジャンヌが悪戦苦闘するのも面白い。夫の不義が露見して以来関係を絶っているので女の子どころか子どもの出来ようが無い。どうしたいいかと司祭に(前述の怨恨のある司祭とは別人。その司祭の前任者)相談すると司祭は夫ジュリアンに「話をつけて」くれる。その夫がいやらしくすりよってくる気持ちわるさ。ところが夫は彼女を妊娠させまいと中で出さないように工夫する。「ええ?それじゃあ意味が無いじゃない!!」と乗り出すようにして読み進むと、我らがジャンヌはそこでまた司祭に相談に行くのである。根掘り葉掘り閨房の秘密を聞き出した牧歌的な司祭とのやり取りがすごい。

「方法は一つしかありませんな。それはあなたが妊娠なさったとご主人に信じさせるのじゃ。そうするともう用心なさらなくなるじゃろう。そうなれば、今度こそ妊娠なさること必定じゃ。」
彼女は目のなかまで真っ赤になった。だがどんなことでもする決心でいたので、さらに重ねてきいた。
「でも・・・・・・わたしの言うことを信用しませんでしたら?」
司祭は、人間はどう操ればいいか、どこの勘所を押さえればいいかをよく知っていた。
「妊娠なさったことをみんなに吹聴なさるのじゃ。いたるところで言いふらしますのじゃ。そうすればご主人もしまいには信用なさるじゃろう」



こういったことをあっさりと明かしてくれる文学作品はあまりない。

性のことをまったく知らないジャンヌが新床でジュリアンととんちんかんなやりとりをするのもおかしい。
『妻は身も心も夫のものなのだよ、拒絶してはいけない、お父さんの口からはそれ以上は言えない』というような内容の土壇場での知恵付けですっかりおびえているジャンヌは、彼女と寝ようとやっきになるジュリアンに、口では「私あなたのものですわ」と繰り返す。しかし、あなたのものになるというのが一体全体何をすることなのかがわからないので思いにもよらない相手の挙動におどろき、体が固く閉じ逃げようとしてしまう。

「では、ぼくのかわいい妻になってくれないというのですか?」
彼女は指のあいだからつぶやいた。
「わたし、そうじゃないんでしょうか?」
「もちろんまだですよ」


ジュリアンだって、女たらしのくせにもう少しジャンヌの心境がわかっても良いのに。

そのほかにも、崖から突き落とされる小屋、突然私生児を産み落とす女中、子どもに夢中になってサニーレタスを植える大人たち、男爵夫人の秘密など、書いても書いてもきりが無い。
ともかく一度読んだら忘れられないシーンの連続である。
文章もあっさりとして読みやすい。視覚に訴えるロマンチックな場面もいくつかあり美しい。
勧善懲悪というほど類型的でない程度にひどい奴がひどい死に様をするのも痛快だ。

ジャンヌは現代によく描かれるような活発な女性でもなく自分の運命を切り開く女性でもない。受動的に与えられた幸せはあっという間に彼女の両手からこぼれてしまった。
それでもむしろ私にはジャンヌの人生は悪くなかったように思うのだけれども。

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オススメポイント:「実に面白い」っていうのは一体どこで・・・。「なかなか面白い」とは言っているけど・・・。
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冒頭:

午前七時三十五分、石神はいつものようにアパートを出た。三月に入ったとはいえ、まだ風はかなり冷たい。マフラーに顎を埋めるようにして歩き出した。通りに出る前に、ちらりと自転車置き場に目を向けた。そこには数台並んでいたが、彼が気にかけている緑色の自転車はなかった。



あらすじ:
探偵ガリレオシリーズ第三作の長編。
数々の難事件を解決してきた物理学者湯川学が『天才』と呼び『好敵手』と認めた学友石神は、家庭の事情で研究職を諦め、高校教師として野に埋もれていた。
数式を解くことだけが生甲斐の地味な暮らしを破る事件、そしてライバル湯川学との対決は。

感想:
理系の中でも数学専攻には変人しかいないと聞くが、石神もその典型で、湯川学を超えた変人として描かれている。彼の登場によって、前2作まで不満のあった湯川学のキャラクターがルネッサンス的天才として際立ち、また才能ある者同士の友情と再会に有頂天になる湯川学の姿に愛すべき要素が加わった。加えて『白夜行』での共犯が一心同体の2人であるが故に不気味な魅力を放ちつつその内面があえて描かれなかったのに対し、共犯がそれぞれ全く違う生活をしていることで人間らしさが生まれている。ヒロインは白夜行と同じくあくまでも盲目的に幸せを求める得体の知れない存在として描かれているが、母親という役割が少しなりと共感を可能にしている。
今までのフラストレーションを解消してくれる傑作。
本格か否か、純愛か否かという議論があることと思う。アクロイド殺し的で本格ではないだろうし、手段は純愛でもないだろうと思う。が、それは作品の価値とは無関係だ。ぞくっとさせてくれること間違いなしである。
「博士の愛した数学」同様に、学校時代数学ができなかったコンプレックスを持つ読者が数学ができるようになったかのような気分を味わえるところも魅力だろう。
石神が現れたことで、湯川学を挟んだ石神対草薙という友情のライバル関係が生まれ、草薙が友情を試されるのも見所のひとつだ。

「君にいっておくが、今回にかぎっては、全面協力というわけにはいかない。僕は個人的な理由で事件を追っている。僕には期待しないでくれ」


「一人の友達として、僕の話を聞けるか。刑事であることは捨てられるか」


湯川学が自分の価値観を述べる「この世に無駄な歯車なんかないし、その使い道を決められるのは歯車自身だけだ」、この意味がわかりにくい言葉が、石神対湯川という対決を頭脳の戦いだけでなく、人間性の戦いにもしている。それによって人間性が最終的な勝敗を決定したかのような読後感があり、後味を良くしている。


DATA:
10進分類:913.6
内容分類:推理小説
メインテーマ:―
サブテーマ:数学

著者名:東野圭吾
著者出身国:日本
時代背景:現代

漢字の難しさ ☆★★(標準)
表現の難しさ ☆★★(理解しやすい)
文体の読みにくさ ☆★★(読みやすい)
テーマの重さ ★★★(テーマ:なし)
テーマの難解さ ★★★(テーマ:なし)
テーマの普遍性 ★★★(テーマ:なし)
所要時間:2時間

受賞:直木賞 本格ミステリ大賞 週刊文春ミステリーベスト10第一位 このミステリーがすごい!第一位 本格ミステリ・ベスト10第一位

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作品に登場する地名に目印をつけてあります。 →地図へ



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