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坂口安吾

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメ対象:男に体を売ったことのある女・男に心を売ったことのある女
オススメポイント:おとこがおんなの一人称をかりるとき

4061960504白痴・青鬼の褌を洗う女
坂口 安吾

講談社 1989-07
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坂口安吾というひとは、男性の主人公を書かせると、女性賛美と女性不信がない交ぜになったこそばゆいことを言い出すのだが、三人称の寓話の美しさと女性の一人称の小説は比類ない。
女形と同じく、そこに架空の性、女性を超えた女像が現出する。
「青鬼の褌を洗う女」は、戦後を妾として贅沢にくらす女から見た、男女の仲のかわゆらしさやかなしさを描いている。
ぽうっとあたたかな色香の湯気を帯びたもち肌におもわぬ底冷えするまなざしを持った女。
彼女は、愛は感謝だ、という。養ってもらい贅沢をさせてもらっていることに対する感謝で、自分をそれほどまでに可愛がってくれる年取った旦那への報いだ、と。そして彼女自身の若さが引き起こす浮気などはものの数ではないし、彼女はそんなものにほんとうの執着はない。
彼女は同性の友人たちに白々とした視線を向ける。身持ちは堅いがすぐに美しい男に心を奪われる女や、身寄りがないがゆえに貞操だけをたよりにして一人生きている処女に。だからといって彼女達を断罪して一線を画することは彼女の性分にはないのだ。妾として生きる覚悟など、ない。「どうでもいいの、それだけのことよ」と、彼女のこだわりのなさは、汁粉のようにとろとろゆるゆるアツ甘く、もどかしい。
自分をただただ愛している年老いた金持ちのけなげさを、彼女は愛らしがって微笑むけれど、もちろん男の絶望は深い。抱きあいながらも、どちらが鬼でどちらが仏なのか、どちらが美でどちらが醜なのか。
戦後には妾という身分にしかなかったモラルが、今世相を覆っている。
性は売られ、心は見失われている。
でもそこにたおやかな詩情がないのは、やはりそれがリアルな女の一人称だからなのか。

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