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境界

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメ対象:報われない場所に居付いてしまった人に
オススメポイント:愛がなんだ

愛がなんだ愛がなんだ
角田 光代

角川書店 2006-02
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へんな場所にはまり込んでしまうことがある。
社会的位置・人間関係、いやむしろ、たんに気分とかが。
なんとも形容しがたい、隙間みたいなところに入ってしまうことがある。
隙間と言いながらその空間は案外広くて、私は途方に暮れてしまう。

角田光代はデビュー以来ずうっとその隙間のことばかり書いてきた人だ。彼女が書いたフリーターなどの若者のモラトリウムにはあまり興味をひかれず、たんに変な場所にはまり込んだいまどきの人のことを書いてるとしか思わなかった。そしてその後も彼女は別々のテーマではあるけれど、現代の隙間のことだけを一貫して描いてきた。そして、社会の冷たい海から突き出ていた氷山の一角はその後恐るべき巨大さをあらわしつつあり、そんな中での「対岸の彼女」の直木賞受賞だったように思う。

「愛がなんだ」は愛の境界を失った人々の話しだ。恋人でも友達でもない関係。今起こっているモラルの崩壊・喪失というのは、不道徳な人々や事件が増えることではないことは、もはや常識だろう。援助交際とか、挨拶のできない若者とか、買春を繰り返す中高年とか、浮気を繰り返す主婦とか、そういうことどもの数が増えることではなくて、そういったことが不道徳、不潔、という一線を越えた向こう側ではなく、自在に往来できるちょっとした変身にしかすぎなくなっているということだ。そう、まるでヘアスタイルを変えるみたいに。
ヘアスタイルみたいな、かろやかなアイデンティティー。春はふんわり愛されアイデンティティー。

主人公テルちゃんは、マモちゃんというチビで冴えないオレ様男を好きだ、というスイッチが入りっぱなしになってしまった女の子だ。スイッチが完全に壊れてしまっている。夜中に帰ってくれと放り出されたり、連絡がとれなくなったり、他の女に食べさせる新しい店のチョコレートを買いに行かされたり、と、いくらOFFボタンが押されても彼女の恋は終わりにならない。男に魅力があるとか、女に意地があるとか、既存の説得力はみごとなまでに皆無、ああテルちゃんはスイッチが入りっぱなし、枠が壊れてしまってるひとなんだなあ、と怖くもある。
けれどテルちゃんというひとには強いようなところもあって、そんな中でも平気で自分を貫いて、自分のなさを貫いて、生きていく。モラルの崩壊した世の中を泳ぐ、突然変異種みたいに。これから爆発的に増殖して世界を塗り替える、圧倒的優位種みたいに。

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