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家族

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オススメ度:☆☆☆☆★
ずっとこどもでいられるの
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冒頭:

私たちの母は、昔からずっと、朝父を送りだすと化粧をし、夕方父が帰ると化粧をおとして出迎えた。



あらすじ:
仕事も進学もしていない19歳の私・宮下こと子。一風変った宮下家六人家族の出来事を描いた物語。

感想:
宮下家は子どもたちが永遠に子どもでい続けることのできる行き止まりのような家だ。
家族ひとりひとりにストーリーがあり、お互いがそれぞれのストーリーを見守りながら絶妙な距離を保っている。
お嫁に行った長女そよちゃんはしあわせに暮らしていたはずなのに、あるときなんの説明もなしに出戻ってくる。…なぞめいたそよちゃんの結婚生活がこの物語のフレームになっており、その破綻を契機としたある晩秋に物語は始まる。

「そよちゃん」
私は、台所に立つ姉の後ろ姿に向かって言った。
「離婚するってどんな気持ちのもの?」
そよちゃんは鍋をみたまま少しだけ考えて、それから微笑を含んだ声でおっとりと、
「そうねえ、半殺しにされたままの状態で旅にでるような気持ち、かしら」



津下というそよちゃんのだんなさんはいい人だけれど地味で、そよちゃんにはふさわしくないと宮下家では考えられている。その人を選んだ理由もわからないし、別れる理由も誰にもわからない。でもそよちゃんが離婚して帰ってくるというと宮下家はうきうきした気分に包まれる。

不思議な人妻そよちゃん、がりがりにやせてへんてこりんな恋愛ばかりしている次女しま子ちゃん、フィギュアを作っているという理由で中学校を停学になる末っ子律。ニートのこと子。
両親は世間に流されない独特の価値基準で子どもたちを受け入れる。

律のフィギュア騒動のときの宮下家はこんな様子だ。

父は首をかしげる。
「どうもよくわからない。ほんとうにそのなんとかいう人形をつくったことで、学校は文句をいっているのかい」
災難だったわね、と、そよちゃんがしんみり言った。
「そうなのよ」
憤りのおさまらない母が言う。
「よその人のぶんまでつくってあげて、それで喜ばれるなら素晴らしいじゃないの」
「律」
依然として核心が持てないという顔で、父が律の名前を呼んだ。
「はい?」
「ほんとうにそれだけなんだね?お前の親切に対して相手がすすんで金を払い、学校はそれが気に入らない?」
律がきっぱりうなずくと、父もようやく気が晴れたらしかった。
「なんだ、くだらない」
それをきくと、母も私もそよちゃんも律もなんとなく気が晴れて、そのあとはたのしく夜ごはんを食べた。



こと子には深町直人という恋人がいるが、部外者というより宮下家の幻影のような男だ。父よりも若く父よりも甘く父と違って体が許される『父親』として存在している。

私は、しま子ちゃんいも深町直人がいればいいのにと思った。こんなふうに晴れた日の公園で、隣にすわって一緒に缶のお茶をのめる男のひとがいればいいのに。しばらく会えずにいたあとで、ちょっと背が高くなったようにみえる男のひと。ちゃんとあたたかい格好をして、やあひさしぶりって言う言い方が自然で、ポケットから固くて甘い袋菓子を出してくれる男のひと。



冬を越し、春先にそよちゃんの結婚生活は終焉を迎える。説明もなしに、静かに悲しく。

がちゃん、と重たい金属音を残して、玄関の扉が閉まった。そよちゃんは、駅にもバス停にも送りにいかなかった。こうして、私達の姉に「半殺し」にされた義兄は帰っていき、その義兄に「半殺し」にされた姉は、うちに帰ってきた。



こうして宮下家と外界との唯一のパイプが閉じられ、物語は穏やかに収束する。

最後の最後でそよちゃん、ちょっとしたサプライズを用意してくれるのだが、それは読んでのお楽しみ。
江国香織の淡く丁寧な筆致による心地良い家庭の雰囲気。自分の家とは違うのに、読むうちにこの家で育ったような気がしてきて、排他的にすらなるから不思議。

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