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書評

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オススメ度:☆☆☆☆☆
かんたんで、正確で、なじんで、あらた。 
絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)
絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)
おすすめ平均
stars江國香織さんの考え方がみえる本
starsやわらかな文章の中に幸せな宝石
starsブンガク少女の絵本紀行
stars江國さんの子供時代を垣間見る様な…
starsなつかしい思い出

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冒頭:

マザーグースにこういう歌がある。

 いきたいところに いけるのなら
 いまいるところには いないでしょう
 いまいるところを でられなきゃ
 いきたいところは いけないの

           (ここではないどこか センダックの絵本によせて)



あらすじ・感想:

江國香織は正確なことばを話す。すごいことにはそれが、とてもかんたんなことばなのだ。かんたんなことばで成り立った、かんたんな文章。とても正確。
つまり難しいことばで難しく何かが語られている場合、その正確さを真実には測りえない。文章という架空の世界の隅と隅とがピシッと合っているとか、柱が立派だとか大きいとかいって感心してみたり引用して賢く見せた気になってみたり、そんなことをわたしはしているのだ。
けれども。
江國香織のことばはすとんと腑に落ちる。
かんたんで、正確で、なじむ。
なじむといって、陳腐ではない。
新しいというんじゃないけれども、やはりあらたなのだ。
かんたんで、正確で、なじんで、あらた。

その正確さは、小説よりも童話、童話よりもエッセイに印象強く現れ、書評において極まる。
江國香織が彼女自身のこころから目を転じ遠くを見るほど、ことばは正確さを増すのだ。それはおそらく創作において彼女が誠実であろうとしているこころが、そのこころというものの全般が誰にとってもだが、あまり正確なものではない、ということだろう。
のみならず、彼女が評論に必要なもの、膨大な教養を実はたっぷりと持っているということでもある。プライベートといえば何かにつけて生活能力の欠如を訴えわらいばなしにしている江國香織だが、絵画・詩歌・童話などへの造詣は深く、エッセイでも、あとがきでも、すぅっとその場にちょうどいいものを引き出してくる。その紹介がまた、ただであったのでは見いだせなかったような魅力をその作品に添える気の利いたものなのだ。
(私は尾形亀之助を江國香織によって知った)

さて、「絵本を抱えて部屋のすみへ」は絵本の評論集である。
絵本の評論というと子どもの教育について理想やそれにまつわる運動の理念を語ったものという印象が強かったのだが、江國香織は、絵本を大人にも子どもにも同じ価値のある芸術あるいは生活必需品として、一冊一冊を丁重に紹介している。彼女が子ども時代からぼろぼろになるまで読み熱愛した作品ばかりだが、それを思い出ばなしにおぼれることなく書いているのだ。

「ここではないどこか センダックの絵本によせて」は、言い表すのが非常に難しいことを論じている。
『ここではないどこか』というのはどこなのか、というのがそのテーマである。
江國香織曰く、『ここ』とは『居心地のいい今いる場所』である。
そして『ここではないどこか』は決して、『ここよりいい場所』ではないので、シンデレラや白雪姫が『何者かに成って行った場所』とは違う。
つまりそこは私が私のままで出かけていく安全でない場所であり、すなわち冒険だ、ということがだんだんにわかるのだが、冒険とストレートに言ったのではたちまちに死滅してしまうような微妙な意味合いを『ここではないどこか』に託しているのである。

この本(『ふふふん へへへん ぽん!』)は不思議な本で、どの絵を見ても、なつかしい気持ちで胸が一杯になってしまう。繊細なペン画はリアルで緻密だけれど、空気がどこか微妙にずれていて、木の一本、猫の一匹、階段の影の一つが、すでに「ここではないどこか」の深い落ち着きと、かるいかなしみ(中略)をたたえているのだ。



目次の一覧を見れば、いずれかの本は目にしたことがあるだろう。
手にとって、愛読書への感慨をあらたにしてみてはどうだろうか。

目次:

わたしに似たひと ――フランシスの絵本によせて
ここではないどこか ――センダックの絵本によせて
生活の愉しみ ――プロヴェンセン夫妻の絵本によせて
個人的なこと ――童謡絵本によせて
地上の天国 ――バーバラ・クーニーの絵本によせて
憧れのパリ ――マドレーヌ絵本の世界
日常生活はかくあれかし ――がまくんとかえるくんの絵本によせて
たくさんの人生 ――ビアトリクス・ポターの絵本によせて
のびのびしたアメリカ ――アメリカ古典絵本の世界へ
骨までしゃぶる ――グスタフ・ドレの絵本によせて
悦びのディテイル ――ピーター・スピアーの絵本によせて
素朴と洗練、それから調和 ――まりーちゃんの絵本によせて
単純に美しいということ ――ディック・ブルーナの絵本によせて
外国のいぬ ――アンガスとプレッツェル、ハリーの絵本によせて
現実のお茶の時間 ――『レナレナ』によせて
曇天の重み ――『ブリキの音符』によせて
護られて在るということ ――マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本によせて
失えないもの ――ガブリエル・バンサンの絵本によせて
親密さと必然性 ――『かしこいビル』の絵本によせて
物語の持つ力 ――『シナの五にんきょうだい』と『九月姫とウグイス』によせて
陰としてのファンタジー ――リスベス・ツヴェルガーの絵本によせて
清濁あわせ呑む絵本 ――『モーモーまきばのおきゃくさま』と『メアリー』によせて
他人の暮らし ――『ファミリー・ポートレート』によせて
大きな絵本 ――『絵本 グレイ・ラビットのおはなし』によせて
身をまかせる強さ ――『おさるのじょーじ』の絵本によせて
本を閉じることさえせつなくなってしまうではないか ――『すばらしいとき』の絵本によせて
ごつごつしたかなしみ ――斉藤隆介と滝平二郎の絵本によせて
つつましい輝き ――くんちゃんの絵本によせて
くらくらする記憶 ――『おこちゃん』によせて
コークス色の記憶 ――『海のおばけオーリー』によせて
セレナーデ ――『あひるのピンのぼうけん』によせて
あかるいうみにつきました ――『せんろはつづくよ』によせて
豊かな喜び ――トミー・デ・パオラの絵本によせて
幸福きわまりない吐息 ――『トロールのばけものどり』によせて
誘拐の手なみ ――『Zちゃん -かべのあな-』によせて
対談1 絵本をつくるということ <五味太郎さんと>
対談2 絵本と出会い、絵本とつきあう <山本容子さんと>
あとがき
解説 ――小野 明
書名・作者名さくいん
全国絵本・児童書専門店リスト




絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

日のあたる白い壁 (集英社文庫) すきまのおともだちたち (集英社文庫) 夕闇の川のざくろ (ポプラ文庫) 思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫) すみれの花の砂糖づけ (新潮文庫)

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