びぶりおふぃりあ  ブックレビューとオススメの海外ドラマ・映画のあらすじと感想。顔面血管腫(赤アザ)カバーメイク体験談

江國香織

ここでは、「江國香織」 に関する記事を紹介しています。
はてなアンテナに追加   

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手

オススメ度:☆☆★★★
オススメポイント:DV
思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)
思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)江國 香織

光文社 2007-06
売り上げランキング : 71806


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


三人姉妹の恋愛や結婚がテーマ。
長女は夫からるDV(ドメスティックバイオレンス 家庭内暴力)を受けているが共依存関係にある。
長女だけでなく、他の姉妹の恋愛も問題が多いのだが、3人とも共感できるところまで表現されていないように思う。
特殊でもいいのだが、あまり魅力がないのは困る。

DVの解決方法として有効なのは、とことん逃げるとか、第三者を立てて法的に戦うとか、そういう手段だと思うんだけど、それを真っ向から否定して精神論に傾いているところに、違和感をおぼえた。
新たな解決方法を提示する、というわけでもなく中途半端なかんじ。
どうして書いたのかな??謎がいっぱいである。

ほのぼのした父との思い出にささえられた心境の変化みたいなもので誰の助けもなく一人で立ち直る長女…

ぽかーん……。

DVってそんなに甘いものなの?

ともかく、江國香織、相当ファザコンこじらせてるなぁ。という小説だった。

☆ブログランキングに参加しています。クリックお願いします☆

ブログランキング


思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)
思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫)江國 香織

光文社 2007-06
売り上げランキング : 71806


Amazonで詳しく見る
by G-Tools


web拍手

スポンサーサイト

関連タグ : 江國香織, DV,

オススメ度:☆☆☆☆☆
かんたんで、正確で、なじんで、あらた。 
絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)
絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)
おすすめ平均
stars江國香織さんの考え方がみえる本
starsやわらかな文章の中に幸せな宝石
starsブンガク少女の絵本紀行
stars江國さんの子供時代を垣間見る様な…
starsなつかしい思い出

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


冒頭:

マザーグースにこういう歌がある。

 いきたいところに いけるのなら
 いまいるところには いないでしょう
 いまいるところを でられなきゃ
 いきたいところは いけないの

           (ここではないどこか センダックの絵本によせて)



あらすじ・感想:

江國香織は正確なことばを話す。すごいことにはそれが、とてもかんたんなことばなのだ。かんたんなことばで成り立った、かんたんな文章。とても正確。
つまり難しいことばで難しく何かが語られている場合、その正確さを真実には測りえない。文章という架空の世界の隅と隅とがピシッと合っているとか、柱が立派だとか大きいとかいって感心してみたり引用して賢く見せた気になってみたり、そんなことをわたしはしているのだ。
けれども。
江國香織のことばはすとんと腑に落ちる。
かんたんで、正確で、なじむ。
なじむといって、陳腐ではない。
新しいというんじゃないけれども、やはりあらたなのだ。
かんたんで、正確で、なじんで、あらた。

その正確さは、小説よりも童話、童話よりもエッセイに印象強く現れ、書評において極まる。
江國香織が彼女自身のこころから目を転じ遠くを見るほど、ことばは正確さを増すのだ。それはおそらく創作において彼女が誠実であろうとしているこころが、そのこころというものの全般が誰にとってもだが、あまり正確なものではない、ということだろう。
のみならず、彼女が評論に必要なもの、膨大な教養を実はたっぷりと持っているということでもある。プライベートといえば何かにつけて生活能力の欠如を訴えわらいばなしにしている江國香織だが、絵画・詩歌・童話などへの造詣は深く、エッセイでも、あとがきでも、すぅっとその場にちょうどいいものを引き出してくる。その紹介がまた、ただであったのでは見いだせなかったような魅力をその作品に添える気の利いたものなのだ。
(私は尾形亀之助を江國香織によって知った)

さて、「絵本を抱えて部屋のすみへ」は絵本の評論集である。
絵本の評論というと子どもの教育について理想やそれにまつわる運動の理念を語ったものという印象が強かったのだが、江國香織は、絵本を大人にも子どもにも同じ価値のある芸術あるいは生活必需品として、一冊一冊を丁重に紹介している。彼女が子ども時代からぼろぼろになるまで読み熱愛した作品ばかりだが、それを思い出ばなしにおぼれることなく書いているのだ。

「ここではないどこか センダックの絵本によせて」は、言い表すのが非常に難しいことを論じている。
『ここではないどこか』というのはどこなのか、というのがそのテーマである。
江國香織曰く、『ここ』とは『居心地のいい今いる場所』である。
そして『ここではないどこか』は決して、『ここよりいい場所』ではないので、シンデレラや白雪姫が『何者かに成って行った場所』とは違う。
つまりそこは私が私のままで出かけていく安全でない場所であり、すなわち冒険だ、ということがだんだんにわかるのだが、冒険とストレートに言ったのではたちまちに死滅してしまうような微妙な意味合いを『ここではないどこか』に託しているのである。

この本(『ふふふん へへへん ぽん!』)は不思議な本で、どの絵を見ても、なつかしい気持ちで胸が一杯になってしまう。繊細なペン画はリアルで緻密だけれど、空気がどこか微妙にずれていて、木の一本、猫の一匹、階段の影の一つが、すでに「ここではないどこか」の深い落ち着きと、かるいかなしみ(中略)をたたえているのだ。



目次の一覧を見れば、いずれかの本は目にしたことがあるだろう。
手にとって、愛読書への感慨をあらたにしてみてはどうだろうか。

目次:

わたしに似たひと ――フランシスの絵本によせて
ここではないどこか ――センダックの絵本によせて
生活の愉しみ ――プロヴェンセン夫妻の絵本によせて
個人的なこと ――童謡絵本によせて
地上の天国 ――バーバラ・クーニーの絵本によせて
憧れのパリ ――マドレーヌ絵本の世界
日常生活はかくあれかし ――がまくんとかえるくんの絵本によせて
たくさんの人生 ――ビアトリクス・ポターの絵本によせて
のびのびしたアメリカ ――アメリカ古典絵本の世界へ
骨までしゃぶる ――グスタフ・ドレの絵本によせて
悦びのディテイル ――ピーター・スピアーの絵本によせて
素朴と洗練、それから調和 ――まりーちゃんの絵本によせて
単純に美しいということ ――ディック・ブルーナの絵本によせて
外国のいぬ ――アンガスとプレッツェル、ハリーの絵本によせて
現実のお茶の時間 ――『レナレナ』によせて
曇天の重み ――『ブリキの音符』によせて
護られて在るということ ――マーガレット・ワイズ・ブラウンの絵本によせて
失えないもの ――ガブリエル・バンサンの絵本によせて
親密さと必然性 ――『かしこいビル』の絵本によせて
物語の持つ力 ――『シナの五にんきょうだい』と『九月姫とウグイス』によせて
陰としてのファンタジー ――リスベス・ツヴェルガーの絵本によせて
清濁あわせ呑む絵本 ――『モーモーまきばのおきゃくさま』と『メアリー』によせて
他人の暮らし ――『ファミリー・ポートレート』によせて
大きな絵本 ――『絵本 グレイ・ラビットのおはなし』によせて
身をまかせる強さ ――『おさるのじょーじ』の絵本によせて
本を閉じることさえせつなくなってしまうではないか ――『すばらしいとき』の絵本によせて
ごつごつしたかなしみ ――斉藤隆介と滝平二郎の絵本によせて
つつましい輝き ――くんちゃんの絵本によせて
くらくらする記憶 ――『おこちゃん』によせて
コークス色の記憶 ――『海のおばけオーリー』によせて
セレナーデ ――『あひるのピンのぼうけん』によせて
あかるいうみにつきました ――『せんろはつづくよ』によせて
豊かな喜び ――トミー・デ・パオラの絵本によせて
幸福きわまりない吐息 ――『トロールのばけものどり』によせて
誘拐の手なみ ――『Zちゃん -かべのあな-』によせて
対談1 絵本をつくるということ <五味太郎さんと>
対談2 絵本と出会い、絵本とつきあう <山本容子さんと>
あとがき
解説 ――小野 明
書名・作者名さくいん
全国絵本・児童書専門店リスト




絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)絵本を抱えて部屋のすみへ (新潮文庫)

日のあたる白い壁 (集英社文庫) すきまのおともだちたち (集英社文庫) 夕闇の川のざくろ (ポプラ文庫) 思いわずらうことなく愉しく生きよ (光文社文庫) すみれの花の砂糖づけ (新潮文庫)

by G-Tools


☆ブログランキングに参加しています。クリックお願いします☆

ブログランキング






web拍手

関連タグ : 江國香織, 書評,

オススメ度:☆☆☆☆★
きらきらひかる (新潮文庫)
きらきらひかる (新潮文庫)
おすすめ平均
starsこれは
starsきらきらひかる
starsおすすめ!
stars散歩をしたあとような読後感
stars不可思議な人間たちの組み合わせが上手い

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


冒頭:

寝る前に星を眺めるのが睦月の習慣で、両眼ともに一・五という視力はその習慣によるものだと、彼はかたく信じている。私も一緒にベランダにでるが、星を眺めるためではない。星をみている睦月の横顔を眺めるためだ。睦月は短いまつ毛がまっすぐにそろっていて、きれいな顔をしている。



あらすじ:
同性愛者で男の恋人のいる夫とアル中で情緒不安定な妻の奇妙な偽装結婚。

感想:
恋は、・・・少なくとも性愛を伴った恋愛の記憶は、いつも匂いの記憶と絡み合っている。
恋人達にはいつも匂いがあった。人には誰であれ匂いがあるのだけれど、恋をするとその人の匂いだけが際立って群集の中でもはっきりと香ってくる。そしてその香りはいつも何かのような匂いをしている。麦茶のような匂いだったり、麝香のような匂いだったり、雨のような匂いだったり。
きっとその匂いをかいだ私は嬉しくなったり安心したり欲情したりしたはずなのだが、その匂いのことをまざまざと思い出すと、わけもなくただただ苦しい。

「きらきらひかる」の主人公笑子(しょうこ)の夫睦月(むつき)は、
・医者
・若い
・かっこいい
・やさしい
・家事できる
と何でも揃った男だが、同性愛者で女性とは関係できない。
笑子は情緒不安定で精神科に通っている。
二人はそれぞれの両親から世間体を押し付けられ見合いをし、意気投合して偽装結婚をする。

しかしこの結婚問題がある。笑子は睦月に対して恋心を抱いているのだが睦月には紺という男の恋人がいる。

「紺くんの話をして」
台所にむかってどなると少し間をおいて、どんな話、という声がかえってきた。
「紺くんとセックスするときの話をして」
私がもう一度どなると、睦月はたまじゃくしを持ったままやってきて、ぼそっと
「機嫌が悪いんだね」
と言った。
「紺くんとセックス―――」
わかったから、と言って苦笑し、睦月はまじめに考えこむ顔をした。ええと、ね。
「ええと、紺はね、紺の背中は背骨がまっすぐで、コーラの匂いがするんだ」
私は睦月の横顔をじっとみつめた。
「一年じゅう日に灼けていて、腰が細くて、腰もやっぱりコーラの匂いなんだ」
コーラの匂い。
おしまい、とつぶやくみたいに言うと、私が文句を言うよりはやく、睦月はシチューを煮込みに台所へ行ってしまった。



結婚という保守的な関係を結びながら、この暮らしがいつ終わるかわからないという不安を常に抱いている笑子。紺と友情が芽生えたり、紺と睦月の精子をロシアンルーレット的に自分に体外受精できないかと発案したり、とおかしなはなしになっていく。
どれだけ行いを律しても、どれだけ思いを隠しても、嫉妬は決して消えることがない。生きかたのスタイルやファッションが違ったとしても存在していて、人を狂わせる。淋しさと笑子は表現しているが、コーラの香りがそれはただの嫉妬だと暴いているのではないか。
かっこよくてやさしい同性愛者との偽装結婚という少女趣味でリアリティの無い設定の上でリアリティの無いドラマが展開し、それなりにリアリティのある心理が描かれている。
きらきらひかる [DVD]
きらきらひかる [DVD]松岡錠司

フジテレビ 2004-07-14
売り上げランキング : 29418

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
バタアシ金魚 [DVD] 命 [DVD] undo [DVD] ナースコール [DVD] 愛することを恐れるべきでない私、愛されていることに気づくべき私



☆ブログランキングに参加しています。クリックお願いします☆

ブログランキング



web拍手

関連タグ : 江國香織,

オススメ度:☆☆☆☆★
ずっとこどもでいられるの
流しのしたの骨 (新潮文庫)流しのしたの骨 (新潮文庫)

ホリー・ガーデン (新潮文庫) 落下する夕方 (角川文庫) すいかの匂い (新潮文庫) きらきらひかる (新潮文庫) ホテルカクタス (集英社文庫)

by G-Tools


冒頭:

私たちの母は、昔からずっと、朝父を送りだすと化粧をし、夕方父が帰ると化粧をおとして出迎えた。



あらすじ:
仕事も進学もしていない19歳の私・宮下こと子。一風変った宮下家六人家族の出来事を描いた物語。

感想:
宮下家は子どもたちが永遠に子どもでい続けることのできる行き止まりのような家だ。
家族ひとりひとりにストーリーがあり、お互いがそれぞれのストーリーを見守りながら絶妙な距離を保っている。
お嫁に行った長女そよちゃんはしあわせに暮らしていたはずなのに、あるときなんの説明もなしに出戻ってくる。…なぞめいたそよちゃんの結婚生活がこの物語のフレームになっており、その破綻を契機としたある晩秋に物語は始まる。

「そよちゃん」
私は、台所に立つ姉の後ろ姿に向かって言った。
「離婚するってどんな気持ちのもの?」
そよちゃんは鍋をみたまま少しだけ考えて、それから微笑を含んだ声でおっとりと、
「そうねえ、半殺しにされたままの状態で旅にでるような気持ち、かしら」



津下というそよちゃんのだんなさんはいい人だけれど地味で、そよちゃんにはふさわしくないと宮下家では考えられている。その人を選んだ理由もわからないし、別れる理由も誰にもわからない。でもそよちゃんが離婚して帰ってくるというと宮下家はうきうきした気分に包まれる。

不思議な人妻そよちゃん、がりがりにやせてへんてこりんな恋愛ばかりしている次女しま子ちゃん、フィギュアを作っているという理由で中学校を停学になる末っ子律。ニートのこと子。
両親は世間に流されない独特の価値基準で子どもたちを受け入れる。

律のフィギュア騒動のときの宮下家はこんな様子だ。

父は首をかしげる。
「どうもよくわからない。ほんとうにそのなんとかいう人形をつくったことで、学校は文句をいっているのかい」
災難だったわね、と、そよちゃんがしんみり言った。
「そうなのよ」
憤りのおさまらない母が言う。
「よその人のぶんまでつくってあげて、それで喜ばれるなら素晴らしいじゃないの」
「律」
依然として核心が持てないという顔で、父が律の名前を呼んだ。
「はい?」
「ほんとうにそれだけなんだね?お前の親切に対して相手がすすんで金を払い、学校はそれが気に入らない?」
律がきっぱりうなずくと、父もようやく気が晴れたらしかった。
「なんだ、くだらない」
それをきくと、母も私もそよちゃんも律もなんとなく気が晴れて、そのあとはたのしく夜ごはんを食べた。



こと子には深町直人という恋人がいるが、部外者というより宮下家の幻影のような男だ。父よりも若く父よりも甘く父と違って体が許される『父親』として存在している。

私は、しま子ちゃんいも深町直人がいればいいのにと思った。こんなふうに晴れた日の公園で、隣にすわって一緒に缶のお茶をのめる男のひとがいればいいのに。しばらく会えずにいたあとで、ちょっと背が高くなったようにみえる男のひと。ちゃんとあたたかい格好をして、やあひさしぶりって言う言い方が自然で、ポケットから固くて甘い袋菓子を出してくれる男のひと。



冬を越し、春先にそよちゃんの結婚生活は終焉を迎える。説明もなしに、静かに悲しく。

がちゃん、と重たい金属音を残して、玄関の扉が閉まった。そよちゃんは、駅にもバス停にも送りにいかなかった。こうして、私達の姉に「半殺し」にされた義兄は帰っていき、その義兄に「半殺し」にされた姉は、うちに帰ってきた。



こうして宮下家と外界との唯一のパイプが閉じられ、物語は穏やかに収束する。

最後の最後でそよちゃん、ちょっとしたサプライズを用意してくれるのだが、それは読んでのお楽しみ。
江国香織の淡く丁寧な筆致による心地良い家庭の雰囲気。自分の家とは違うのに、読むうちにこの家で育ったような気がしてきて、排他的にすらなるから不思議。

流しのしたの骨 (新潮文庫)流しのしたの骨 (新潮文庫)

ホリー・ガーデン (新潮文庫) 落下する夕方 (角川文庫) すいかの匂い (新潮文庫) きらきらひかる (新潮文庫) ホテルカクタス (集英社文庫)

by G-Tools

☆ブログランキングに参加しています。クリックお願いします☆

ブログランキング


web拍手

関連タグ : 江國香織, 家族,

オススメ度:☆★★★★

赤い長靴 (文春文庫 え 10-1)赤い長靴 (文春文庫 え 10-1)
江國 香織

文藝春秋 2008-03-07
売り上げランキング : 33208
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

結婚生活の、いやなところばかり思い出してしまった。
江國香織の「赤い長靴」を読んだからである。

攻撃的な小説って結構あって、被害妄想を掻き立てられてけんか腰になってしまうのはよくあることだ。例えばグレン・サヴァンの「僕の美しい人だから」。エリートサラリーマンと、色っぽいけど無教養な中年のおばさんの恋。これを読んだ時には、はなもちならない男に腹が立ってしかたなく、男性全体に対する憎しみがふつふつと沸き、2,3日そのへんにいる男たちを睨みつけた。
けれど、「赤い長靴」はそれほどでもない。つまらないからそんな気にもならないのだ。

とっても不思議な気持ちになったので、仕事から帰って来たパートナーに説明してみた。
「旦那さんは全然話を聞いてないわけ。お風呂にする?お食事にする?って訊くと、『うん』って回答するの」
「そりゃだめだね」
「そしてバナナを床に捨てるのよ」
「俺なら殴るよ」
「だけど最後はチュ―して終わりなのよ」
「気持ち悪いね」
このやりとりだけでひとつの小説の内容が全て伝達できたのが驚きである。
「どうして江國香織はそんな小説を書いたの?」
彼は訊いた。当然の問いである。私は困惑して、言った。
「それが、わからない。」

かつての江國香織だったら、妻は浮気をしたはずだ。
おとなしく従順で、男に(あるいはもっと他の何かに)守られた生活に安らぎをおぼえる女が、よその男をとらえどころなく魅惑する、というのが十八番だと思っていた。
ところがこの妻はパート先の若い男の子と話をしていても何もおっぱじめないのである。
江國香織を読んだらきっと得られると思っていた甘くておいしいお菓子の味が得られなかったので自信をなくして、Amazonで他の人の感想を読んでみることにした。
ファンが多いからか☆の平均値は少なくないのだが、「がっかりした」「つまらない」「何かのついでじゃないと読めない」「イライラする」「息苦しい」・・・という感想がけっこうあって、少しほっとした。よし。私の目が悪くなったわけじゃない。江國香織の問題だ。

夫が描ききれてないのが最大の欠点。
執拗に繰り返される「話を聞いていない夫と、くすくす笑うことでそれをやり過ごす妻」というモチーフの退屈さよりもなによりも。
以下引用するので、時間が許せばお付き合いいただきたい。

犬と猫の食べる草、というものを打っていた。小さな鉢植えで、いれいな緑色をしていた。
「買おう」
と逍三が言ったので、日和子は、
「なぜ?」
と尋ねた。
「うちには犬も猫もいないのに。私はその草が欲しくないのに」
逍三はきいていなかった。すでにそれを買っていた。
「欲しくないと言ったのよ」
もう一度言った。逍三はふり向き、にっこりして、
「はい」
と言って、鉢植え入りのビニール袋を差し出した。ききわけのない子供にお菓子を買い与えるみたいに。
「買おう」
次に逍三がそう言ったのは、頭に羽飾りをつけた人形がたの貯金箱だった。
「やめて。汚れているし、こわい顔だわ」
逍三はそれを買った。日和子は足を速め、品物を見ずに歩くことにした。何かを見ると逍三が買ってしまうからだ。逍三は、しかしさらに買い物をした。くまのアプリケのついた鍋つかみと、未使用の口紅だった。先を歩いていた日和子には止める間もなかったし、何を買っているのか見えもしなかった。
日和子のところまでやってきた逍三が、袋を渡してくれながら、
「もういいだろ」
と言ったとき、たぶん何かが壊れたのだ。それは火に似ていた。烈しい怒りの感情だったのだろうとあとになって思った。日和子はびっくりして口がきけず、次の瞬間には自分が泣き出したかと思った。日和子はくすくす笑っていた。くすくす笑いながら、どうしてこんなに悲しいのだろうと思っていた。ばかげている、と。
「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」

同じ場面を逍三から語ったくだりは次のとおり
以下引用

「買おう」
立ち止まった妻の視線の先に、直径五センチほどの植木鉢があるのを見て、逍三は言った。緑色の草が鉢の直径いっぱいに、しゃわしゃわとたくさんまっすぐに生えている。
「なぜ?」
おどろいた顔で日和子が振り返った時、逍三はすでにポケットから財布を出していた。そのときには何もいわなかった日和子も、逍三が頭に羽飾りをつけた人形がたの貯金箱を、
「買おう」
と言ったときには、
「やめて」
とはっきりした口調で反対した。たかだか数百円の貯金箱で議論することもないと思えたので、逍三はそれを買った。日和子はかなしそうな顔をした。
日和子はすぐにかなしそうな顔をするのだ。逍三には、その理由は見当もつかない。せっかく来たのだし、何か買ったほうがいいと思えた。さらにいくつか買い物をすると、日和子がくすくす笑い始めた。くすくす笑って、
「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」

以上

別れても云々はおいて、大丈夫じゃないだろう逍ちゃんは。

たぶんこの小説の描写どおりだったら、夫は脳に何らかの疾患・障害がある。それも「なんとか症候群」みたいな、無理やりつけて得意がってるような病名じゃなくて、シリアスでクリティカルな。
夫が、妻から見た虚像のまま一人称になっていて、一人の個人として生きていないのだ。
人は、ここに書かれているよりははるかに、他人と関係無しに自ずから存在しているはずなのだが、ここでの夫「逍ちゃん」は妻の妄想の具現化でしかない。だから読む人を苛立たせる。読み手は妻の物語でも夫の物語でも同じ妄想に付き合わされるのだ。
「電信柱みたいで、どんどん大きくなっていく」という夫の描写が、確信犯的に膨らむ妄想へのメタファーだというのは、おせっかいな読み込みすぎだろう。

残念ながら『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞したのは作家として幸せなことではないように思う。与えるべきではなかったのだ。「取れる作品」ではあったけれど、『号泣する』は江國香織の作品ではない。『号泣する』の方向に舵を切ったままでは彼女は迷走するだろう。そんなの目に見えてるのに。賞が一人の作家をダメにしてしまわないことを祈っている。


☆ブログランキングに参加しています。クリックお願いします☆

ブログランキング



web拍手

関連タグ : 江國香織, 夫婦愛,

オススメ度:☆☆☆☆☆
オススメ対象:激情と静寂を併せ持つ人に。
オススメポイント:誰にも捕まらない女と誰も掴まえなくて良い女の恋
4043480016落下する夕方
江國 香織

角川書店 1999-06
売り上げランキング : 25,221
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

年を重ねるごとに、人生は複雑になり、思いはシンプルになる。
若いときには目をぎゅっとつむり息をとめて早く過ぎてしまうことだけを祈ってた刹那に、目を開いていられるようになる。夢中であることもくるしみつくすことも変わらないのに、みひらいているぶん、その映像を知ってしまう。恐ろしくも美しく。こんなときにこんな場所で呼吸ができるなんて、と吸ってしまったが最後、もう元には戻れない体なのだった。怖いものがなくなるなんて、なんと恐れ多い。
大きな安らぎを捨てて恋人が女にはしった。とうの女が男の去ったマンションに住み着いてしまう、誰にも所有されない女はでもそのことをけして楽しんではいないのだ。不幸なひと。
誰が誰と恋をしているのか。
だれかを自分のほかの誰かを欲しいと思い知りたいと思うそれが恋ならば、この女ふたりの、恋なのかも。

☆ブログランキングに参加しています。クリックお願いします☆

ブログランキング



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。