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米原万里

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オススメ度:☆☆☆☆☆
オススメ対象:バイリンガルと「夢は日本語で見るの?」以外の外国語の話をしたい人
不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)
不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)米原 万里

おすすめ平均
stars一つのロシア語同時通訳バブルの総決算
stars浮気性の美人と堅い醜女とは、翻訳論?
stars優れたコミュニケーション論
stars長く読み継がれるべきエッセイ
stars「通訳論」を超えた良質なエッセー

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冒頭:

日露の専門化が食卓を囲んで懇談している最中のこと、通訳していた青年の喉に鮭の骨が突き刺さってしまい、当然の事ながら業務履行不能に陥った。しかもひどく苦しみ痛がるので救急車が呼ばれて、青年は病院に運ばれた。あっけないほど簡単に骨をピンセットで抜き取ってもらい、ようやく人心地ついたのだった。ところが、



あらすじ・概要:
エッセイスト・小説家でもあった米原万里のロシア語通訳としての経験や、各国語通訳との交流、ロシア語通訳協会の事務局長、会長としての見聞と研究をもとにした、通訳、言語、コミュニケーションについての考察。
タイトルになっている不実な美女、とは「原発言に忠実でないが美しい訳文」、貞淑な醜女(「ブス」というルビ)とは「原発言に忠実だが不細工な訳文」を指している。通訳はそのはざまでしのぎを削っている、ということ。

感想:
「日本人離れしている」という言葉がほめ言葉であるということに、ずっと抵抗を抱いてきた。

でも、ここでは特にほめ言葉でなく、かといってけなし言葉でもなく、米原万里のエッセイにこの言葉を贈りたい。

ものすごく日本語のうまい日本人離れした文章だ。

そこが、独特で面白い。

特徴は、文字数に対して意味の強い語彙が多いこと。
一般的な日本人の書く文章とかなり情報密度が違う。
比重が高いのだ。
省略がなく「言い尽くした」かたちの文章が多い。
私がとりわけ異質に感ずるのは、形式名詞の少なさだ。
「こと」「もの」「ほう」など、本来の意味を失いかけた、他の表現の足がかりとして埋め込まれる形式名詞。もっと進むと格助詞「の」の体言の省略形みたいに、空中のある地点に片足をかけるような言葉もあるけれど、もちろんそんなものは一切使わない。

「そんなの、ない」

という会話が、米原万里だと

「そんな言葉、私は使わないわよ。」

となって、単独でも周辺の事情が理解できるような文章になるのだ。

活字中毒にはたまらない文章だと思う。


この特徴が、通訳という職業柄のものなのだ、とわかるのが本書「不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か」。


通訳がどのようなプロセスで話を聞き取り、記憶し、メモし、他の言語に置き換え、発言するのか、というメカニズムが説明されている。
またその職業のために、時事をチェックしたりボキャブラリーを増やしたりと努力を怠らない日々のことも書かれている。この努力の中に、無駄で冗長な表現を削って本質を伝えるということがある。これは、同時通訳者持ち時間を増やしたり伝達しやすくするためだ。

なるほど、これだ、これが独特の文章を生み出しているのだ、と納得。

日本語には言外に語る行間を読む、という美学があるが、それは翻訳という業務ではあってはならないことなのだ。

この語り口が米原万里の長所である思い切りの良さ、見聞の広さ、そしてなんといってもユーモアのセンスと相まって、なんて頭の回転の速い人だろう、と感心する。

通訳についてあますところなく語り、翻訳や日本語などの周辺についても鋭い洞察をし、逸品の誉れ高いエッセイとなっている。

栄養価の高い内容がみっちり詰まって、何度でもダシが取れて、しめしめお得、なのである。



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DATA:
10進分類:801.7
内容分類:翻訳
メインテーマ:翻訳法

著者名:米原万里
著者出身国:日本
時代背景:現代

漢字の難しさ ☆☆★
表現の難しさ ☆☆★
文体の読みにくさ ☆☆★
テーマの重さ ★★★
テーマの難解さ ☆☆★
テーマの普遍性 ☆☆★
所要時間:(15分刻み)6時間

受賞:読売文学賞

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)
米原 万里

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) オリガ・モリソヴナの反語法 (集英社文庫) 旅行者の朝食 (文春文庫) ロシアは今日も荒れ模様 (講談社文庫) 魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章 (新潮文庫)

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関連タグ : 米原万里, 通訳,

オススメ度:☆☆☆☆★
オススメポイント:題材が秀逸
オリガ・モリソヴナの反語法
オリガ・モリソヴナの反語法米原 万里

おすすめ平均
stars傑作、傑作、傑作!
starsもっと小説を書いてほしかった。
starsこれはほんとうの話
starsすばらしい小説です
stars秋の夜長に

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自分の過去の謎を解き明かす旅の話は、それだけで既におもしろい。

これはひとつのロマンの典型なのだ。

自分の人生の価値を確かめに行く、それは多くの人が抱く夢だろう。このような物語は読み手の願望を代わって満たしてくれる。主人公は自分と同じ境遇である必要はない。むしろ知らない遠い世界の出来事であるなら申し分ないのである。

一見したところ平凡な中年女が、平凡ならざる過去を持っている。
ある挫折に繋がるひとつづきの思い出。

あらすじ:
少女時代を過ごした共産圏における豊かな情操教育がダンサーへの夢を抱かせた。
ダンサーになったもののスターになるほどの才能には恵まれず、怪我によって引退、帰国子女としての経験を活かし翻訳業へ転身。
しばらくはダンスを目にするのもいやだった。
しかし時間がその傷も癒やした。ふとしたきっかけで彼女は過去を辿る旅に出る。
それはスターリンの大粛清時代の恐怖政治が現実のものだったと確かめることになる。



感想:
チェコスロバキアのソビエト学校。地元の学校ではなく、ソビエト連邦管轄の学校である。

ここで主人公志摩は名物ダンス教師オリガ・モリソヴナに出会う。
オリガ・モリソヴナは優に七十を超える堂々たる老婆であるが、スタイルは抜群に良く、おまけにレッスンでは破廉恥な言葉を多様、特に反語法を使って生徒を震え上がらせるのだ。
反語法、要するにここでは誉め殺しのことだ。

「ああ神様! これぞ神様が与えて下さった天分でなくてなんだろう。長生きはしてみるもんだ。こんな才能はじめてお目にかかるよ! あたしゃ嬉しくて嬉しくて嬉しくて狂い死にしそうだね!」

これ、誉めているのではないのである。

『文法の授業で反語法のことを習うよりはるか前から、子供たちはみな、先生が「天才」と言うのは「うすのろ」の意味なのだと知っていた。』

実に豪傑で好奇心をそそられる老婆オリガ・モリソヴナ。そんな彼女には激動の過去、そして誰にも言えない秘密があった。

スターリンによる大粛清の恐怖はその当時のみならず、人々のその後の人生までを狂わせてしまった。


ノンフィクションとフィクションの違いは、事実か空想か、ってところだけなのだろうか…なんて、根本的なことを、「オリガ・モリソヴナの反語法」を読んで、考えなおしてしまった。


「オリガ・モリソヴナの反語法」は、共産圏で共産党員の娘として育った米原万里でなければ語ることのできない題材を扱っている。小説なのかノンフィクションなのか、どちらとも言えない雰囲気が魅力的だ。ノンフィクションで満たすことの出来なかったロマンをファンタジーが補い、スターリン時代の真実を描き出している。

もっと押し進めてエンターテインメントに徹したらどんな話になっていたんだろう、とちょっと想像してしまった。

米原万里のキップの良さ、読む人をじらせ待たせたりできない有能さは、小説としては変則的かもしれないけど、全体を上品かつスピードのあるものに仕上げていて、面白く読める。

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメ対象:ウォッカ好きに
オススメポイント:この世にブスはいない、ウォッカが足りないだけだ。
ロシアは今日も荒れ模様
ロシアは今日も荒れ模様米原 万里

おすすめ平均
starsロシア現代史を爆笑する
stars遠くてととっつきにくい国だと思ってたけど・・・
stars風邪をすんなり治すには
stars爆笑現代ロシア史
starsロシア初心者にぴったりかも

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あらすじ:
ロシア語通訳として政府要人の重要な会議に立ち会った米原万里が、ソビエト連邦という国がどういう国だったのかを語ったユーモアたっぷりの爆笑エッセイ。



ウォッカの飲み味が好きだ。
酒に弱くすぐゆだったように赤くなり、それが幸いしたのか宴席で酒を無理強いされた経験など皆無、という私が、おかしいけど、ウォッカが好きだ。

ウォッカは唐辛子に似ている。

胃でぽっと赤く灯って、やたら唾液がでて、何もかも面白くなってくる。ワインや日本酒みたいにへんな匂いも後味もなくって、チーズだの魚だの要求しないし、ソムリエだの利き酒だのしゃらくせえこと言わないし、ものすっごくダイレクトに人生に効いてくる。

米原万里の「ロシアは今日も荒れ模様」は、とてもオススメのエッセイ。
西側諸国に比べて日本には伝わりにくいロシアのお国柄を、爆笑に次ぐ爆笑で読み知ることができる。

海外と国内で大きくずれていたゴルバチョフとエリツィンの評価の違いは、全てウォッカが原因だったという説はあながち嘘ではないかも、と思えてくる。アルコールを戒めて国民に総スカンを食らったゴルバチョフ、だらしなく飲んだくれて仕事する姿が国民に愛されていたエリツィン。

ソビエトだろうとロシアだろうと、ロシア人の中で変わらないもの、それはウォッカ、それだけなのかもしれない。


ウォッカを飲みながら「ロシアは今日も荒れ模様」を読んで笑うのは、大人の夜の楽しい過ごし方だ。

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ほろ酔い加減のロシア―ウォッカ迷言集
ほろ酔い加減のロシア―ウォッカ迷言集狩野 亨

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ロシア小話アネクドート―腐敗と寒さを笑い飛ばせ いまどきロシアウォッカ事情 ロシア庭園めぐり ロシア・エチケットへの旅―ロシアの人々と楽しく、気楽につきあうための7章 るるぶロシア―モスクワ・サンクトペテルブルグ

オススメ度:☆☆☆☆☆
オススメ対象:旧共産圏の生活のイメージが浮かばない人。
オススメポイント:時代に翻弄されて。

4043756011嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原 万里

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ロシア語会議通訳のかたわらエッセイスト・コメンテイターとしても活躍する米原万里は、1960年~64年プラハで少女時代を過ごした。プラハの春以前のチェコスロバキア。
共産主義。その思想および19世紀~20世紀に及ぶ大きな運動は、今の資本主義先進国では”お笑い草”という扱いしかされていない。
でも私は非常にこの時代この運動に興味を持っている。思想的にというのでは全くないのだが、(数多い革命を含め)共産主義運動ほど「人間はこんなにも時代に翻弄される」ということを教えてくれるムーブメントは他にないと思うのだ。
しかし東側の情報は堅苦しいドキュメンタリーや大筋で歴史をなぞらえるだけだったりと、人間を感じさせる材料が非常に少ない。旧政権に迫害されていた人のインタビューや今の就職難についてのレポートは重要だとは思うけれど、生活の中にあったはずの笑い・喜びを知らないと、苦しみに奥行きが出ず、理解や共感ができない。
「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は文章も明晰で視点の距離とピントが心地よく、良いエッセイの備えるべき美点を総ざらえしているが、その上やはり内容が良い。同級生三人の鮮やかな思い出と、大人になって探し出した彼女達の現在。ましてや出会いはプラハのソヴィエト学校、少女達の国籍はギリシャ・ルーマニア・ユーゴスラビア。再会までの歳月激動に揺れた国々である。
やはりどこの国であっても同じように少女時代があるのだと思わせてくれる、貴重な一冊。人形劇と美しい町並みと弾圧されたプラハの春のイメージしかなかったチェコに、人の声やほこりっぽい雑踏が見えてくる。
ベルリンの壁の崩壊が感動的だったのは、それが共産主義の敗北と資本主義の勝利を意味したからではない。あのとき崩れたのが共産主義ではなく”壁”だったからだ。壊れた壁の向こうに、おたがいに、ただの人間がいたからだ。それを忘れたくない。



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