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自然主義文学

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オススメ度:☆☆★★★

蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)
蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)田山 花袋

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おすすめ平均 star
starこの時代に恋愛小説として読んだ場合
star読んでみると
star日本人の性に対する感覚の遍歴 その明治編

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あらすじ:
中年の文学者である主人公(田山花袋)は三人の子供を産んだ妻に飽きており、ちょうど入門したばかりの若く美しい女弟子に懸想する。そして女弟子の恋愛に嫉妬したあげくに親に言いつけ仲を引き裂いて女弟子を田舎に帰してしまう。


感想:


この中年男の気持ち悪いことといったら…。
三人目の子供を懐妊中の妻が難産で死んだら女弟子を後釜に据えられるかなぁと夢想したり、
恋人と寝た女弟子をふしだらだと責めながら内心「もうキズモノなんだから自分の妾にしやすいかもしれない」と妄想したり、
果ては女弟子が下宿中に使っていた蒲団の襟の特に汚れたところの匂いを嗅いで泣くのである!!

田山花袋の作品が分類される日本の自然主義文学で、最も有名かつ今でも読まれているのは島崎藤村の『破戒』くらいのもので、同時代の耽美派・白樺派・余裕派と比較すると寂しいものである。

自然主義文学の日本における解釈が「恥ずかしい事実を自ら暴露すること」だったため、彼らは「文学」になりえなかったのかもしれない。

エミール・ゾラの提唱した「観察と客観」はもっと理知的なものだったのだが、この誤解といえる解釈を決定付けたのが田山花袋『蒲団』であった。
彼が弟子岡田美知代への心情を暴露したこの作品によって、自然主義文学は「事実の暴露」、もっと言ってしまえば「恥ずかしい事実の暴露」となってしまったのである。
 ※ 耽美派(谷崎潤一郎・永井荷風)・白樺派(武者小路実篤・志賀直哉・有島武雄)・余裕派(夏目漱石・森鴎外)

『蒲団』は、時代が今であれば、セクハラ・パワハラで有罪になるであろう、女弟子への卑しい妄執の告白である。

あらすじにも書いたように、主人公(田山花袋)は妻に飽きて女弟子に執着するようになり、彼女の恋愛の邪魔をする。男が未熟であることが口実だが、実は男が女弟子が男と純愛でなく肉体関係があったと知ってカッとしたのである。

先生、こんなこと黙っておけばいいのに。

こういうことを書くことに価値があった時代があったのだなあ、と感心。


蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)蒲団・重右衛門の最後 (新潮文庫)
田山 花袋

田舎教師 (新潮文庫) 武蔵野 (新潮文庫) 浮雲 (新潮文庫) 破戒 (新潮文庫) 暗夜行路 (新潮文庫)

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オススメポイント:脂肪の塊、とは何か
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脂肪の塊、というこのタイトル、物語中の娼婦のあだ名なのである。
しぼうのかたまり!
売れるんだろうか。他人事ながら心配になる。
ところが読んでみるとこれがかなりの売れっ子なのである。頃は普仏戦争(1870~1871)、所はプロシアに占領されたフランスのある地域、貧困の時には肥満が美しさの条件となるならい、脂肪の塊も男たちの食欲をそそってやまない女なのだ。
その印象は雪に難儀して宿場に到着の遅れた馬車の中で三日分の豊富な弁当の入ったバスケットを膨らんだスカートの足下から取り出す描写によって深く刻み込まれる。

まず小さな瀬戸物皿と薄手の銀のコップと、それから大きな蓋物を取り出した。蓋物の中には、丁寧に包丁を入れた二羽の雛鳥の完全なのがジェリーに包まれていた。そして籠のなかにはまだいろいろとおいしいものが紙にくるんであるのが見られた。パイだの果物だの菓子だの、要するに宿屋の板場の厄介にならないようにと、三日旅に用意された食料であった。四本の酒瓶の細長い首が、食物の包みの間から覗いていた。女は、雛鳥の翼肉のところを一つ撮んで、ノルマンディーで「レジャンス」と呼ぶ小さなパンに添えて、つつましく食べ始めた。

ひもじい様をありったけ書いた後でこんな描写をされてしまうと。私など我ながらよく出来た煮物と頂き物の美味しい林檎で夕食をたっぷり済ませたはずなのに、舌が浮かび上がるほど唾が沸く。
占領された街を逃げ出した裕福な人々の馬車に相乗りし、彼女も別の街を目指している途上なのだが、ここで豊満美があだとなる。途中の宿でプロシア人士官に気に入られてしまったのだ。
彼女は愛国心から断り続けるが、士官は思いを遂げられなければ相客もろとも宿を出立させない、と職権を利用して圧力を掛ける。
良質のエピソードに織り込まれ通奏される相客たちの心理の変化は、実に社会の縮図をあらわしている。社会における"ケガレ"のどうにもならない必然性、ある秩序が保たれるため必要な犠牲、その役割を荷わせるのも荷うのも同じく人間だという矛盾。社会ってこういうものなんだよなあ。

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