びぶりおふぃりあ  ブックレビューとオススメの海外ドラマ・映画のあらすじと感想。顔面血管腫(赤アザ)カバーメイク体験談

2006年12月

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オススメ度:☆☆☆☆★
オススメポイント:音楽

屈辱ポンチ
屈辱ポンチ町田 康

文藝春秋 2003-05
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おすすめ平均 star
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とにかく気持ちいいのだ。
不条理な世界に溢れるやさしさ、リアル。
世間からの疎外?いやちがう。疎外されているという感じはない。疎外というのは心の問題で、社会的な位置と完全に一致しているわけではないのだ。
定職についていず金も人生の確たる目的もないという主人公の設定が社会的地位だとすれば予想される心は焦りや苛立ちだろう。しかし疎外感とは「何かを手に入れなくてはならぬ何者かにならねばならぬ、自分以外の皆は何かを手にした何者かであるに違いない」、という陥りがちな思い込みによるもので、これは客観的に考えれば馬鹿馬鹿しい妄想でしかない。他人のことは常に人生のさまざまな事柄をうまくこなしているように見えがちなものであり、要するに人は自分の人生ばかりは伝記や大河小説を読むように椅子に腰掛けて眺め楽しむことはできない、見聞きするのと生きるのとでは、人生は全然別個のものなのだ。
どうやら町田康の小説の主人公たちはそのことだけはきっちりと理解している様子なのだ。面白いのは「俺はこれでいいのだこんな人間なのだ」、と書かれ主張されているわけではないということだ。なのにそう感じさせる強烈な個性、それは音楽性だ。
「けものがれ、俺らの猿と」のストーリー。妻が家を出て行き奇妙な羽虫の巣窟となった自宅、奇妙な老人から持ち込まれた映画の脚本の仕事、とびついてシナリオハンティングするうちに環境問題がらみの闘争に巻き込まれ、奇矯な大仏に笑い転げたがゆえに発作を起こす連れ、助けを呼ぶつもりがエキセントリックな男に軟禁され俳句三昧、火事に乗じ猿を伴って逃走、最後は蟻が沈んだミルクセーキを出す薄汚いレトロな内装の喫茶店で店員の振りをしつつ、The END。
この不条理な展開を語る視点は物語の流れと共に常に休むことなく前進している。流されているわけでもなく流れを作っているわけでもない。この時間との完全な一体感。これこそが町田康の真骨頂だろう。読んでいるというよりは、聴いている感じなのだ。またその読み味、喉ごしが良い。繰り返し読める。
読み終わったあとに残る深い爪あとがあるかというと、ない。
音楽と同じで、流れ、消えていくのだ。残るものは言語でなく、体の記憶だ。
この、作品自体の持つ質感が、登場人物の社会的地位からかけはなれた自由の感覚を生んでいる。

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けものがれ、俺らの猿と
けものがれ、俺らの猿と町田康 木田紀生 久保直樹

おすすめ平均
stars鳥肌実の圧倒的な存在感。
starsぐふぇぐふぐふぉぐふぁふぁ、だ、大丈夫でございやすよ
stars2トーン
starsけっこう愉快な世界観
stars大好きです

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