びぶりおふぃりあ  ブックレビューとオススメの海外ドラマ・映画のあらすじと感想。顔面血管腫(赤アザ)カバーメイク体験談

2007年02月

ここでは、「2007年02月」 に関する記事を紹介しています。
はてなアンテナに追加   

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

web拍手

オススメ度:☆☆☆☆★
オススメ対象:平明な言葉に敬意を払う人に

がいこつ
がいこつ谷川 俊太郎 和田 誠

教育画劇 2005-11
売り上げランキング : 87297

おすすめ平均 star
starもしも
star好きな人とブランコ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


ある友達が死んでから、もう8年になる。
それは横浜ベイスターズが優勝してからの年月と同じだ。よく覚えている。彼の好きだった阪神が、その翌年に優勝したことも。最後に会ったのが横浜駅の近くで、消防署の隣の公園で消防隊員が訓練をしているのを見ていたことも、春には多摩の中央公園で、キャッチボールをしたことも、私のグローブの革が固まっていて、中指にアザができたことも。
そして最後に電話をしたとき、私がひどい風邪を引いて、寝込んでいたことも。
あの日私は、会社を休んでいた。天王町のYBPで働いていた頃のことだ。喉が痛くて、声がほとんど出ない。普段そんな風邪を引くことは、ないのだけれど。
「金貸してくれん?」
それが彼の用件だった。
理由。郷里の高松に住んでいる昔の恋人が交通事故で意識不明の重態で、見舞いに行きたいから。
「向こう行けばな、親もいてるし、金出してもらえるんだけど、今旅行にいってんのよ」
彼はなしくずしに大学を辞め、働いても、たぶんいなかった。
私とはテレアポのバイトで知り合って、そこでは真面目に働いていたのだけれど、いつごろからか何もかもつまらなくなり、日々旅するような暮らしがしたいと、何かになどなりたくないと、真面目に働く自分も嫌いだと、そのバイトもやめていた。

「いいよ。振り込むよ。いくら?高松まで、5万くらい?」
「いや・・・その倍くらい、欲しいのよね。向こうついてからいろいろあるから」
「ふうん。いいよ。」
「ほんま?!ほんとに?」
やけに嬉しそうな声になった。
「いやぁ、だからキミのこと好きなんよ、いや、金のこととかじゃなしに。ほんと、キミには絶対何か恩を返すよ。」
金のこととかじゃなしに、なんだったのだろうか。そのあと、何度か考えた。思えば私はあのとき、彼の言い訳が嘘だと感じており、それでもいいや、と金を貸すようなところ、そんなところのことなのかもしれない。そんな推察は、彼を見くびっているのだろうか。
電話を切ってから、しばらく、眠った。とにかく朦朧としていて、喉が痛くてたまらなかった。真冬のことで、駅前のATMまで行かなくては、と思いながら、眠っていた。
やがて目覚め、駅に向かう途中、彼から催促の電話が掛かってきて、それが、最後の電話となった。
次にかけた電話は不払いのため繋がらず、掛かってきた電話はバイト仲間からの訃報の電話だった。
だれかのところに、警察から電話が掛かってきたのだそうだ。
携帯電話に載っていた電話番号に。
遺体の身元を調べるために。
女の子を殺して、首を吊って死んだ、男の遺体が誰なのかを。

友達というやつはものすごく近くにいるんだけれど、いざってなるとあまりそばには行けない。ただでさえそうなのに、こんな死に方をしたらなおのことだ。葬式もない。東京で一人暮らしだったから、親の顔も知らない。
しばらく、毎日彼のことを考えた。二年。
調べて親に会いに行き、墓参りをした人たちもいるらしい。
やっぱり金を貸していて、返してもらった人もいるらしい。
けれど私は行かなかった。行く気になれなかった。そこに彼はいないと思った。それにたぶん私は、彼が死んだというよりは、彼が家族に隠された、というふうに思っていたのかもしれない。
死んだひとは、家族のものだから。
何度も何度も彼のことを考え、時々、電話が繋がる幻を見た。
彼のように優しくしてくれた人はそれまでいなかったし、彼のように心からかわいがってくれた他人はいなかったから。
電話が繋がったらきっと私は言う、
「お金ならあるのよ。だいじょうぶ、お金なら、あるの。」
何も心配しなくていい、将来のことも、失った夢も、楽しかった高校時代も。
それでも私はやっぱり彼のことを将来がない、って、わかってたんだよな、と思う。だから付き合おうっていう冗談半分の言葉を、冗談100%にしか、取らなかった。男の人だとは、感じていなかった。
お金の心配などしなくていいと、そういってあげられる世界は、見放された子供達の住む、まぶたのない白昼夢。

『がいこつ』は谷川俊太郎の詩に和田誠が絵をつけた、絵本だ。
男の子が自分の死を夢想する、悲しくも楽しい詩。
死んだらがいこつになって大好きなようこちゃんとずっと遊ぶ、そんな夢だ。
「もうおなかもすかないし
 もうしぬのもこわくないから」
久しぶりに、彼のことを考えた。遊びに来てくれたって、いいのに。もう将来の心配もしなくていいし、もう死ぬのも恐くないんだから。

☆面白い、と思ったらここをクリック!☆

ブログランキング



谷川俊太郎詩選集 1
谷川俊太郎詩選集  1谷川 俊太郎

集英社 2005-06-17
売り上げランキング : 64597

おすすめ平均 star
star気持ちいい言葉のかたまり
star若い頃の谷川俊太郎の言葉があふれています

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

谷川俊太郎詩選集 (2)
谷川俊太郎詩選集 (2)谷川 俊太郎

集英社 2005-07-20
売り上げランキング : 77084

おすすめ平均 star
starやっぱりいい
star70~80年代の谷川俊太郎

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

谷川俊太郎詩選集 3
谷川俊太郎詩選集 3谷川 俊太郎

集英社 2005-08-19
売り上げランキング : 80246

おすすめ平均 star
starぜひ書簡インタビューを読んでみてください

Amazonで詳しく見る
by G-Tools




web拍手

スポンサーサイト

関連タグ : 谷川俊太郎,


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。