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人魚姫(アンデルセン)

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人魚姫
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「それから、王子の愛のことだが、あのひとがお前のことを誰よりも愛して、父親のことも母親のことも忘れてしまうほどお前を愛して、明けても暮れてもお前のことだけを愛して、もうお前と神の前で永遠に結ばれるしかない、というところまで愛さなければ、お前は人間の持っている魂というやつを手に入れることはできないよ。それがもしちがって、王子が他の女と結婚するようなことになったら、いいか、そのあくる朝、お前の心臓ははりさけ、お前は海の泡となってしまうんだよ」
「かまわないわ」
人魚姫は言いました。その顔は、死人のように青ざめていました。

男のことを思うとき、この魔女の言葉を思い出す。
あのひとが父親のことも母親のことも忘れてしまうほど、・・・。
たとえ結婚したといったって、男は父親のことも母親のことも忘れていない。
けれど女は青ざめて、自分の持っている一番美しいものをその愛を獲得するために差し出すのだ。
王子は人魚姫ではなく隣の国の王女と結婚してしまうけれど、それだって何も、父母祖国を捨て無我夢中というほどのことではない。ちょっとした人違いや若者らしい情熱はあっても、ふさわしい相手とふさわしくめぐり合い、皆に祝福されて結婚するのだ。
とても賢明なのだ。

それがどうだろう、モンタギュー家のロミオときたら。
さっきまで他の女の尻を追い掛け回していたというのに、あっというまに今度は仇敵キャピュレット家のジュリエットに懸想してキスを奪い、その足で忍んで行くのがあのバルコニーのシーンである。
「ロミオ、ロミオ、なぜあなたはロミオなの?お父様と縁を切って、その名を捨てて。」
当の相手が潜んでいるとも知らず一人嘆くジュリエットの前に、ロミオはのこのこと出て行ってあっさり言う。
「捨てます」
馬鹿息子である。
私はちょっと、笑ってしまう。
そしてその後で、くるおしい熱に胸を掴まれる。
ジュリエットはちょっとした行き違いからロミオと死んでしまうけれど、この二人からはびっくりするほど幸せな光があって、それはきっと先ほどの、おろかしいまでに無防備な、「私はあなたを愛しているからあなたは私を愛しているから私はあなたを愛しているからあなたは私を」と、もう溶けて渾然一体になってしまう迷いなき情熱である。ロミオが魅惑的に見えるのはジュリエットが彼に夢中だから。ジュリエットが美しく見えるのはロミオが彼女を愛しているから。そうでなければただの親不孝な頭の悪いガキである。

人魚姫は身を引いて海の泡となり、神に救済される。そんな風になりたいとはとうてい思えぬ。彼女の不幸からは女というふくよかさをすべて漉し取られている。
王子は彼女に指一本触れず、ただ妹のように可愛がり、彼女の思いにまったく気付かない。
彼女は眷属を捨て自慢の美声や足の痛みと引換えにしても欲しいと願ったはずの男を、殺めることも誘惑することもできない。
これが人間の女だったら、なんとしてもこの男と寝るだろう。その前にまず、寝てもいない男のために、ここまでしないだろう。関係を持っていたとして、隣の国の姫は殺すだろう。それでも自分のものにできないとき、この男を殺すだろう。自分を引き裂いたこの恋を、素手でわしづかみにするだろう。
まあ、そこまででなくとも、である。何もかもを捨てたという片道切符の情熱の、不自然なまでの未遂は、永遠に処女である人魚の堅さ、かりそめの脚を手に入れても暗示として残されている「美しいけれど交わることのできない娘」だからこそ物語になるのである。


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