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男の出産(松久淳/新潮文庫)

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オススメ度:☆☆★★★
男の出産―妻といっしょに妊娠しました (新潮文庫)
男の出産―妻といっしょに妊娠しました (新潮文庫)松久 淳

新潮社 2003-03
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冒頭:

妻が妊娠した。
なれないことをすると、すぐに結果が出るもんなんだと思った。


子供を持った人々が規則正しい生活をしているのを見て、やはりちゃんとした人が人の親になるのだな、それとも子供のしつけのために生まれ変わってきちんとするのだろうか、などと思っていた。
甘い。
人の親になってやっとわかった。彼らが夜更かしもせず、三度のご飯を決まった時間に食べ、せっせと散歩に行く理由。それは、「そうしないととんでもないことになっちゃう」からなのだった。きちんと生活のリズムが作れれば、だいたい夜は寝てくれるし、おっぱいもちゃんと飲んでくれるし、昼間もごきげんよく過ごしてくれる。
出産するとつらかったことなど忘れてしまうというけれど、そのとおりである。「喜びのあまりに」忘れてしまうだけではなく、「それどころじゃない」から忘れてしまう。おまけに子供は毎日毎日成長していて、昨日できなかったことが今日はできる、先週ぶかぶかだった服が今週はぴったりだ、と振り返る隙はない。

松久淳は田中渉と共著で『天国の本屋』などを書いている小説家、編集者。
内容が特に優れているとは思わないのだが文章はしっかりしているので、ある男性が妻の妊娠・出産に向き合った体験記としてほどほどに読め、父親の側からの妊娠本は多くないので、若干の付加価値もある。
立会い出産は絶対にしないと固く決意、女の子だと思い込んだ子供が男だった、うちの妻は良くできた美人だ。・・・どうでもいいよ、と言いたくもなる。
しかし不思議なほどなまなましく、思い出したのだ。私自身の妊娠と出産のことを。妊娠初期のつわりの時期から、安定期に仕事ばかりしていたことも、胎児名をつけて呼んでいたことも、出産のときの熱い空気のことも。共通点などほとんどないのに、である。この本の中では奥さんにつわりはないし、仕事だって私ほどしてるわけじゃないし、男の子だったし、出産は立会い出産だったし・・・・・・。しかしまざまざと甦るこれはなんだろう。
0週から40週までをリアルタイムで書いていること、出産する本人ではないことなどが作用するのだろうか。
ともかく、私は娘がおなかにいた頃のことを思い出し、あの頃も幸せだったと思い、そして今この境遇の幸せをじわじわと感じた。


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