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キッチン(よしもとばなな 吉本ばなな)

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オススメ度:☆☆☆☆☆
オススメポイント:家族の食卓
キッチン (新潮文庫)
キッチン (新潮文庫)吉本 ばなな

おすすめ平均
stars「死」を受け入れるということ
stars大人の心の予行練習
starsうはっ。
stars死ぬまで好きなんだと思う
stars日常と、非日常

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冒頭:

私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。



収録作品:
キッチン
満月―キッチン2
ムーンライト・シャドウ

あらすじ:
親しい人を亡くした若い人が、悲しみから立ち直るというテーマの作品三篇

感想:
「さっきの話ですけど、言わないでもらえますか、他の人に。誰にも言ったこと、ないんで」
嬉しかった。秘密にしてねと言われることも、誰にも言ったことないことを言ってもらうことも、久しぶりだったから。そして少し、嬉しいと思ったことで後ろめたくなった。彼女の話は、深刻だったのだ。
彼女はぎょっとするくらい食の細い女の子だった。とても若いのに夏でも肌を何重にも重ね着して覆って、唯一出ている手首と足首は硬く締まっていた。
人と食事ができない、と彼女は言った。
すっごく仲がいい人ともいっしょに食べられないんです。気持ちが悪いんです。喉を通らなくなっちゃうんです。何年か前から。病院にも行ってるんです。
こうしたら?とか、こんな話をきいたことが、とか、ああ私の友達も、とか。そんな余地はなかった。
「うん、良くなるといいね」
とだけ、答えた。

よしもとばなな、結構好きである。
今となっては私の中ではすっかり「サブカルチャー」枠に入ってしまったけど、『キッチン』や『TUGUMI』は今でも好きだ。
愛する人を失う、というテーマをよしもとばななはデビュー以来幾度も繰り返して書いている。そして喪失から再生に向けてのアプローチとして後にオカルトを全面に打ち出すようになりサブカルの果てに旅立つのだが、最初は「食」がその役割を果たしていた。
食べること、料理すること、の素晴らしさだけでなく、よしもとばななが最も重きを置いていたのは「ふたりでいっしょに食べる」という行為だった。

同時期の作品ということで村上春樹「ノルウェイの森」で言うと、再生へのアプローチはセックスだった。
よしもとばななが軽んじられたのは文章云々ではなく「食」が身近で手に入りやすすぎるためだったし、村上春樹の救済がいつも不完全なのはセックスが不妊だからだ。これがこのニ人の作家の本質である。
どちらも二人でする欲望を満たし心地よい行為であり、それを堕落ではなく健全として描くところに共通点があった。
『ノルウェイの森』と『キッチン』はバブルを母とした一卵性双生児のようなものだ。
村上春樹とよしもとばななは似ていないが、この2作を呑み込み爆発的にヒットさせたのは同じ「時代」だった。

「異様においしい。」
私は言った。その小さく新しい、木の匂いのする店でカウンターにすわって食べたかきあげ丼は、食欲を思い出すくらいにおいしかった。
「なー?」
柊が言った。
「うん。おいしい。生きててよかったと思うくらいおいしい。」
私は言った。あんまりほめたので、店の人がカウンターの向こうで恥ずかしそうにするくらい、おいしかった。
「そうだろ!さつきは絶対そう言うと思ったんだ。君の食べ物の趣味は正しい。喜んでくれて本当にうれしい。」
                 (ムーンライト・シャドウ)


明るい部屋、あたたかいストーブの熱気の中で、床にすわって2人は淡々とそれらのものを食べた。私はとても、とてもおなかがすいていたことに気づいて、とてもおいしく食べた。この子の前では私はいつもおいしく物を食べている気がした。
                 (ムーンライト・シャドウ)


雄一は冷蔵庫からグレープフルーツを出して、楽しそうにジューサーを箱から出した。
私は、夜中の台所、すごい音でつくられる2人分のジュースの音を聴きながらラーメンをゆでていた。
                 (キッチン)


「どうして君とものを食うと、こんなにおいしいのかな。」
私は笑って、
「食欲と性欲が同時に満たされるからじゃない?」
と言った。
「ちがう、ちがう、ちがう。」
大笑いしながら雄一が言った。
「きっと、家族だからだよ。」
                 (満月―キッチン2)



一番顕著なのは、『満月―キッチン2』で、雄一との絆が切れてしまう予感を感じながらなすすべなく諦めかけたみかげが旅先でカツ丼を食べ、その旨さに感激し、やはり旅に出ていた雄一にそれを届けるべく一人前をおみやにしてもらい、タクシーで遠い町まで夜中に駆けつけるところだ。私はここが一番好き。カツ丼を食べるたびに思い出す。
『ノルウェイの森』について一番良く聞いた「理解できない」という感想は、「なぜあそこであの人とセックスするのかわけがわからない」というものだった。
『キッチン』は、文章が作文並に下手すぎるという苦情は多くあったが、「なぜ食べるのか」というところに疑問を呈する人はいなかった。「なんでカツ丼なんかと!」と言う人などいなかった。食べるとはあたりまえで誰もがする行為であり、それによって元気になるのは自然の摂理なのだ。それでも新しかった。そして、おいしそうだった。登場人物たちは酔っ払い始めみたいにうかれておいしがっていた。文章、下手なのに。ものすごく、おいしそうだった。

いつか重ね着の友達の病気が治ったら、ほんとに治って、いっしょに何度もごはんを食べて、もうだいじょうぶって確認したら、よしもとばななの『キッチン』の話をしたいものだ。

DATA:
10進分類:913.6
#純文学・エンターテイメント・名作
#恋愛・ヒューマンドラマ・青春小説・社会派・
内容分類:
メインテーマ:親しい人の死からの立ち直り
メインテーマ:「食」の大切さ

著者名:よしもとばなな
著者出身国:日本
時代背景:現代(バブル期)

漢字の難しさ ☆★★
表現の難しさ ☆★★
文体の読みにくさ ☆★★
テーマの重さ ☆☆★
テーマの難解さ ☆★★
テーマの普遍性 ☆☆☆
所要時間:45分

受賞:泉鏡花賞・「海燕」新人文学賞

キッチン (新潮文庫)
キッチン (新潮文庫)吉本 ばなな

おすすめ平均
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stars大人の心の予行練習
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2003年に吉本ばななからよしもとばななに改名。
ばなりん、子供は「チビ」で亀が「チビちゃん」はわかりにくいよー。よしもとばなな公式サイト←日記は頻繁に更新。
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関連タグ : よしもとばなな, 吉本ばなな, 喪失と再生, 村上春樹, ノルウェイの森,

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2009/02/02(月) | パワージューサー

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