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森のなかのママ (井上荒野)

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オススメ度:☆☆☆★★
ひどいわおかあさん…。 
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冒頭:

昨日、あたしは振られた。



あらすじ・感想:


とらえどころのない女性を母にもった娘の小説というのは珍しくないパターン。
私自身もその娘なので共感する部分もあった。

贅沢な暮らしをするために父が描いた母の絵を売ろうとする母に詰め寄る場面、

あたしは一瞬、言葉に詰まる。ママとしゃべっているとよくあることだが、追いつめているつもりが、なぜか追いつめられているような気がしてくる。
「ママの絵なんだよ、あれ」
必死に言うと、
「わかってるわよそんなこと」
とママはだんだん勢いづいてくる。
「ママの絵なんだもん、いいじゃない。そうよ、そうよ。ママの絵なんだから、いずみちゃんがごしゃごしゃ言うことないでしょ?」
あたしはもはや言い返す気力もなくなって口をつぐんだ。


主人公いずみはこの母親に思いを寄せる伏見さんという老人に恋をしている。美しい母親には取り巻きの男性たちがいて、彼らは浮世を忘れるため彼女のサロンへ集まってくる。

娘のあたしが言うのも何だけれど、ママの容色は、年をとっても色あせていない。それはたぶん、ママの美人ぶりが、のほほんに支えられているからだ。
  (中略)
この世の不幸は、ママに何の影響も及ぼさない。ママは傷つかないい、成長もしない。どこ吹く風、なのだ。


とらえどころのない女性を母にもった娘ならわかるだろうが、この母親、読んでいて苛々する。

途中ママがどこかにいなくなるという筋なのだが、いなくなって、みつかるまでのページ数が少なすぎることにがっかりし、もっといなくなってろと思った。「なんだこれ、ほとんどいなくなってないじゃないか」いずみがママを大切にし、心配しすぎるところも気に食わなかった。

私の母もそういう女性だったと書いたが、母親のもっている雰囲気というのは主に母親自身がことばで表明したセルフイメージにささえられているように思う。母親の言葉には呪術の力があって、子どもは最大の被験者となる。たとえば、おかあさんってがんばりやさんなのよ、と言われれば自堕落な姿を毎日見せ付けられてもかなり長いこと子どもはそう信じるし、まじめなのと言われても信じるだろう。母の言葉は逃れがたい。
私は母が庭を眺めていたことを思い出す。
狭い庭に斜めに日が差していた。春の昼さがりのことだった。木々の枝影が橙に輝く草むらを抱き、柔らかな風が母が育てた花を揺らしていた。風は開かれた窓から吹き込んであたたかな土のかおりで部屋をみたした。
母は窓枠に寄り掛かり、外を見ながら言った。
「きれいね。あなたにはわからないでしょうけれど、景色がきれいだ、なんてことは」
母はいつも自分の豊かな感受性が私には絶対に理解できないという言い方を何かにつけてしていた。それは反抗期を迎え母の体から離れて行く私への復讐だったのだと今はわかるが、自分にも目に映る景色をいとおしむことができると発見し、母に特別な目があるわけでもないと理解するのには相当長い時間がかかった。

自分の家族関係や人間関係を思い起こさせる話を読んで苛々したり怒ったりするのはストレス解消になることもあるが、こと”とらえどころのない女性”というモデルに限っては、美しさと永遠というイメージが必ずついて回る彼女たちはとっちめられるということが絶対にないので、すっきりする可能性は少ない。

軽い読み物としての筆力は良い。
ただし読みものとして面白いと手放しに評価するには、テレビ局や夫の裏切りがさらさら書かれていることに却って不快感をもったし、いずみが老人の伏見さんを男性として好きな理由も好きな気持ちもうまく描かれていないように思う。これではそばにいたいとか触りたいという気に到底なれず、どう考えても同級生の照次郎のほうが良い。照次郎との恋はうまく書かれている。
まあ、そういう話なのかもしれないが。
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