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ワーニャ伯父さん チェーホフ ①あらすじ

ワーニャ伯父さんは、1897のチェーホフの戯曲。世界中で愛され、今も上演され続けている。


登場人物
セレブリャコフ 元大学教授
エレーナ 教授の27歳の後妻
ソーニャ 先妻の娘
マリヤ・ワシーリエヴナ 先妻の母
ワーニャ 先妻の兄
アーストロフ 医者
テレーギン 零落した地主
マリーナ 年老いた乳母
下男


最初のページからおもしろいなと思うのは、登場人物の紹介がセレブリャコフ教授を中心に解説されていることだ。
でも教授って『ワーニャ伯父さん』の中でほんっとにどうでもいいつまらない人間なのよね。最後にちょろっとワーニャに殺されかける以外、何の面白味もないやつなのよ。
本当はこの物語の中心はワーニャもしくはソーニャなので、彼らを中心にするべきなんだけど、そうはなっていないよね。おかしくない?タイトルロールのワーニャを先頭にして、ソーニャを次に、というのが妥当な気がする。
何順なんだろう。
地位が高い順?というわけでもなさそうだし。
それともこれってもしかして、セレブリャコフが先妻・後妻と二つの縁戚があるのを説明しなければならないから便宜上セレブリャコフを中心としているのかな。

この登場人物説明を、私が書くとしたら、こんな感じかな。

ワーニャ 田舎の地主の長男。土地を妹に譲った後もその管理に長年従事してきた。47歳。独身。
ソーニャ ワーニャの姪。母亡き今は領地の地権者。ワーニャと共に献身的に領地を守り、家族の間で控え目に立ち働いている。独身。
セレブリャコフ ソーニャの父。退職した大学教授。妻を亡くし最近年甲斐もなく20代の後妻をめとった。
エレーナ セレブリャコフの後妻。とてつもなく美人。27歳。
アーストロフ 一家と懇意にしている医者。セレブリャコフの痛風の治療のため訪れる。



■あらすじ

ワーニャとその姪ソーニャはロシアの田舎で領地の管理に従事している。草刈りをしたり、小作人に直接指示を出したりといった実務である。彼らはそうやって働いた土地のあがりから、ソーニャの父、ワーニャの義弟であるセレブリャコフが都会で不自由なく暮らせるよう援助をしてきた。

大学教授が一族にいるということが彼らの誇りだったのだ。

ところがセレブリャコフが年を取り退職してしまうと様相が一変する。
ワーニャは目標を失って燃え尽きてしまい、生涯をささげたセレブリャコフを憎むようになる。
その片田舎の領地にセレブリャコフが絶世の美女である妻エレーナを連れて来たものだから、更に自体は混乱する。

現代人から見て重苦しいのは、一族結束して名誉を勝ち取ろうとするこのような旧来の家制度が、ワーニャやソーニャのような犠牲を必要としていた、ということだ。

金銭的援助だけではない。

パパ が まだ 若かっ た ころ、 伯父 さん や お 祖母 さま は 毎晩 の よう に、 パパ の ため に 本 を 訳し たり、 パパ の 原稿 を 清書 し て くださっ た じゃ ない の、 毎晩 の よう によ!   あたし と 伯父 さん は、 息 を つく 間もなく 働い て、 自分 には 一切 お金 を かけ ず、 全部 パパ に 仕送り し て き た わ……。 あたし たち、 できる 限り の こと は し た つもり よ!

チェーホフ. ワーニャ伯父さん/三人姉妹 (光文社古典新訳文庫) (Kindle の位置No.1103-1110). 光文社. Kindle 版.


19世紀ロシアの(ロシアだけではないが)教養レベルから、上のソーニャのセリフにあるように、本を訳したり原稿を清書したりといった仕事ができる教育を受けているのは使用人ではなく家族なのであり、ワーニャはセレブリャコフ教授にその著書に決してクレジットされないであろう知的労働をも捧げたのである。

ワーニャは財産を放棄し、妻もめとらなかった。ソーニャの縁談を考えてくれる人もいない。財産を集約して相続するためには、全てのハチが女王バチになるわけにはいかない。一生蜜を運び続ける働きバチ、それがワーニャでありソーニャなのである。

だからこそセレブリャコフ教授はこれみよがしにエレーナという若い美女を手に入れて境遇の違いを見せつけるのだが、ワーニャの堪忍袋の緒が切れるのはそこではない。
最後の最後にセレブリャコフ教授があろうことか『土地を売ってフィンランドに別荘を買いたい』と言い出すのだ。
この地に汗し涙し血を注いだワーニャはこの裏切りを許せない。
そしてセレブリャコフ教授はワーニャに拳銃で追い回される。
この騒動がこの戯曲のクライマックスである。

それにしても、冒頭にあげた登場人物を見ると、やはりこの筋立て、少しおかしい。
これが芝居ではなく本当の家であれば、皆もっとソーニャの婿取りに熱心になるはずで、セレブリャコフ教授がもはや引退している以上、一家のテーマは若い世代を育て跡目を残すことだろう。

それをさせていないということこそが、チェーホフが何を描きたかったのか、ということを紐解くカギになると思う。



続きは、またこんど。

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