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星旅少年 (坂月さかな)

オススメ度:☆☆☆☆★
あなたの記憶はどんな味?
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星旅少年1



最近は心境の移り変わりがずいぶん早くて、日々の気持ちをすばやく書き残す大切さを感じている。
気持ちが変わっていくのは、出来事が多いからで、私としては結構なことだと思っているのだが。

星旅少年(ほしたびしょうねん)、という漫画があって、娘(中3)の蔵書なのだけれど、長いこと借りている。
読んではあるのだけれど、感想を書くまでは借りておきたくて、結局1年以上借りていることになる。
娘からは手元に置いておきたいと繰り返し督促されている。
でも、糸口がないまま書き出すのがどこか億劫で、ずるずると時間が過ぎてしまった。
とある感想を持った、というのは確かで、それを形にしたいと思う、そう思わない本や漫画が多い中では、その確信は貴重だ。
おそらくはこれがエゴというものの一形態なのだろうけど、私は「自分の芯とつながっているが、まだ形を与えられていない、とある考え」があると執着が強すぎて手放すことができない。
そうこうするうちに、2巻まで借りてしまったのだ。

その世界では、ひとびとの営みは緩やかな終焉へと向かっている。
いろいろな星に住み、行き来をしてきた人間たちは、「トビアスの木」の毒によって、一人、また一人と眠りにつく。そしてその人もまた、トビアスの木に姿を変えてしまう。
物語はプラネタリウム・ゴースト・トラベル社の 星旅人(ほしたびびと)、登録ナンバー303によって紡がれていく。
彼の仕事は、滅びゆく星々を来訪し、 文化を記憶すること…。

アクションの少ない静かな画面は、漫画というよりイラストのようでもあるし、絵本のようでもある。
全体的に青い風景に、トビアスの木の実の赤いきらめきが印象的だ。
言葉による説明は少ないと感じるが、世界観に一本筋が通っていて細部に説得力があって、優しいタッチのSFものなのに、どこかリアリティがある。何度も、読める。

私の『とある感想』の源となったのは、主人公の303がトビアスの木の実を食べて、もともとその木がひとであった頃の記憶を味わう、というエピソードだ。
本来トビアスの木の実は毒なのだが、303は特異体質なのか食べることができる。

その実が搔き立てる イマジネーションが、私自身の記憶を強く呼び覚ます。
実の色である赤も、きっとその要因となっている。
私の顔には、赤いあざがある。

赤いあざにはずいぶんつらい目にあわされた。
社会になじめないことがその最たるもので、いつも私と私を見るひととの間に大きな壁となってたちはだかり、子どもの私にはそれをどうしたらいいのかわからなかった。この問題は複雑すぎて、当然私の感情も複雑すぎるものとなり、両親はそれなりに私のために何かしようとはしてくれたけれど彼ら自身が突き当たったことのない問題であったため、私の心を導くには役不足で、彼らの「自尊心を持て」という悲鳴じみた(実際彼らの心の叫びだったのだろうけど)極端な教育は私をプライドのモンスターにしただけに終わった。
学校ではいつもひどいあだ名で呼ばれ、蛇蝎のごとく嫌われていた。近隣の小学校の子も噂を聞いていたというから、私はその小学校の怪物だったに違いない。そこでおとなしく泣いているような気質なら、優しい人々から波及するようにやがていじめは止んだと思うけれど、先に書いたように私は両親によってプライドのモンスターに育て上げられていたので、さんざん相手に言い返し、時に殴って、固いとげが無数に飛び出ているハリネズミのバケモノのようになっていたので、どこかそれはいじめと呼べるようなものでもなくなり、何をどう解決したら良いのか、教師もほとほと手を焼いていた、というありさまだった。

大人になりそのようなことはほとんど忘れてしまっている。
私はだいたい20年単位で自分の歴史がリフレッシュされているように感じることがあって、20代のころの必死の恋愛も今では別の人生のようだし、それ以前の子供時代に至っては、良く知っている物語のような身近さで、つまり超えられないような一定の距離を感じているのだった。

あの頃の私も、トビアスの木の実のように、ひとけのない夜にひっそりと輝いている。私はそれを摘んで、口に含む。

そんな幻想が浮かんで、心をつかんだかと思うとまた遠くすっと離れていった。

ああ、あの頃はほんとうに、あんなことに必死になって、一生懸命で、なんてかわいかったんだろう。
と、狂おしい思いが湧きおこり、心臓のかべをどしどしと2回叩いて、それもまた消えていった。

そう。今はもう。


さて、これで『星旅少年』を娘に返すことができそうだな。
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