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アフターダーク(村上春樹/講談社)

ここでは、「アフターダーク(村上春樹/講談社)」 に関する記事を紹介しています。

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オススメ度:☆★★★★
アフターダーク
アフターダーク村上 春樹

おすすめ平均
stars小説を読む、ということ。
starsつながりそうでつながらない
stars村上春樹作品は気楽に読めないので困る
stars二律背反の村上ワールド
stars静かなタフネス

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残念ながら私たちは現代を生きている。私たちが生きるということが、現代である。だからこの問題を避けることはできない。時間の果てまで逃げても。
めまぐるしく変わる世相・価値観。その中で自己を拠点に何かを発信し続けることは難しい。特に、言葉を手段とする場合には。
もう既に言い古された感さえあるが、なぜ、という部分については納得の行く分析を聞いたことはない。
「アフターダーク」を読み、ふと、そのことを考えた。
村上春樹は現代の日本を代表する作家である。いわゆる団塊の世代であり、彼らの経験した世相は貧しい戦後復興、高度経済成長、大学闘争、米ソ冷戦、バブル経済、ベルリンの壁崩壊、平成不況、911、と劇的にめまぐるしい。ある価値観が生まれ、育ち、腐敗し、取って代わられる、それが幾度も幾度も繰り返された。比重はもちろん大学闘争に多くを置かれる。彼らの多くがそのときの「思想の転び」を過ちの分岐点と捉えており、この失敗を挫折として抱え続けている。
同じく団塊の世代である私の父が、酔ったときに言った。
「いやぁあの頃は、こんなになると思ってなかった、あの頃は、世の中は良くなるもんだとばっかり思って信じてた。」
驚いた声で。まるで天女が隠された羽衣の端に触れた拍子に自分の出自を思い出したように。
村上春樹は著作を読む限りでは天真爛漫に「世の中良くなる」と思っていたタイプでもないようだ。彼はセンスの良い、けれどちょっぴり偏屈、という主人公を多く自身の分身として描いてきた。彼の描く主人公はいつも時代の中でちょっと斜に構えて、けれどとても礼儀正しくお行儀よくささやかに生きている。それでも、世代の力とは強いのだろう。その時代の空気に含まれていた期待と興奮を吸わずに生きることはできない。まして、若ければ。
村上春樹の作品にもそういった空気が常に存在しているし、それどころでなく、彼の背骨にはその時代の髄液が流れている。
だからこそ彼はバブル経済期の世の中を「ちょっとおかしいんじゃないか」という姿勢で描き続け、それも闘争という形ではなく「一歩退いたところで抱く激しい悲しみ」としてあらわしたためにバブル時代の心をわしづかみにし、ミリオンセラーを生んだのだ。
バブルが弾けた後、村上春樹は創作活動においてめぼしい作品を残していない。どれも駄作であるし、何がしたいのかすらわからないものも数多い。ただ独特のちょっとした言い回しが醸し出す優しい雰囲気が、昔の人気を偲ばせるだけだ。
彼が「おかしい」と批判できるのはバブル経済どまりなのだ。思想という精神の世界を具現化しようとして果たせなかったのだから、物質主義にアンチを唱えるのはおての物だ。ところが彼らの敵である物質主義が自滅したあとはどうだろう、そこに深い精神世界が見出されただろうか。まさか。皆疲れ果て、道を見失っただけだ。
「おかしいぜ!」といえるのは若さなのだ。若さが与える根拠のない自信、この世の中を自分の力で変えていけるという勘違い。
どこかで、ちょっとそれを信じてる、いくら斜に構えてたって風変わりだって、若さは万人に与えられている。
「アフターダーク」に描かれている暴力は「ねじまき鳥」に描かれているそれとかなり似た描き方をされているが、実体は確実に変容してきている。それは名前のない、得体の知れない暴力であり、無差別で平凡で、理由が欠落し、必然性だけが存在している。
それは今の世の中を覆っている”不安”が恐れているものを示している。
しかし非常に印象が薄く、心に残らない。それは、村上春樹が「でもやっぱもうちょっと頑張ればなんとかなるだろ!もう、ちょっとだ!」とは思っていないからだ。若い主人公たちは物語中どんな戦いにも参加していない。これは若者に対する距離の表れだ。そして、にもかかわらずどことなく「救いがある」感じ。これは自分の手を離れた若さに対する期待の表れだろう。
読む心に残らなければ、表現はされなかったのと同じことだ。

表面上、時代はめまぐるしく移っている。しかしもっと深い水脈はぐっと緩やかに流れているはずなのだ。その時代性の中で、人の一生にふさわしい移り変わりの中で、表現するにふさわしいテーマがあるはずだ。年を取ったら食物や酒や着る服を変えるように。

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